スタチン以外の脂質異常症治療薬まとめ|LDL・TGでどう使い分ける?

スタチン以外の脂質異常症治療薬まとめ|LDL・TGでどう使い分ける?

脂質異常症の治療薬といえば、まず中心になるのはスタチンです。

一方で、現場ではスタチンだけでは整理しきれない場面も少なくありません。

たとえば、

「スタチンだけでLDL-Cが下がりきらない」
「LDL-Cより中性脂肪が高い」
「腎機能が悪いけどTGを下げたい」等

このあたりは、薬局でもよく確認したくなるポイントです。

今回は、スタチン以外の脂質異常症治療薬について、薬剤師が現場で使いやすいように整理していきます。

スタチンについてはこちら

目次

まずは全体像:何を主に下げる薬か

スタチン以外の脂質異常症治療薬は、まず

LDL-Cを下げたい薬なのか、
TGを下げたい薬なのか

で分けると理解しやすくなります。

主に下げたいもの代表的な薬
LDL-Cエゼチミブ
PCSK9関連薬
陰イオン交換樹脂
プロブコール
ロミタピド
TGフィブラート系
ペマフィブラート
EPA製剤
オメガ3脂肪酸製剤
特殊な高リスク例PCSK9関連薬、ロミタピドなど

もちろん、薬によってはLDL-CやTG以外にも影響します。

ただ、現場で最初に見るべきなのは、
「この薬は何を下げる目的で出ているのか」
です。

脂質異常症の薬って、全部コレステロールを下げる薬ではないん?

そこが混乱しやすいところだね。LDLを下げる薬もあれば、中性脂肪を下げる薬もある。“何を下げたい処方なのか”を見ると整理しやすいよ。」

エゼチミブ|小腸でコレステロール吸収を抑える薬

主に下げるもの

LDL-C

エゼチミブは、小腸でのコレステロール吸収を抑える薬です。
小腸壁細胞に存在するNPC1L1を介してコレステロールおよび植物ステロールの吸収を阻害するとされています。

つまり、
スタチンが「肝臓でコレステロールを作るのを抑える薬」
だとすると、
エゼチミブは「腸からコレステロールが入ってくるのを抑える薬」と考えるとわかりやすいです。

現場での使いどころ

エゼチミブは、スタチンでLDL-Cが十分に下がらないときの上乗せ薬としてよく使われます。

  • スタチン単独でLDL-Cが目標未達
  • スタチン増量が難しい
  • 高齢者で強力な増量に慎重な場合
  • 食事・胆汁由来の吸収も意識したい

服薬指導での説明例

患者さんには、次のように説明すると伝わりやすいです。

「この薬は、腸からコレステロールが吸収されるのを抑えて、悪玉コレステロールを下げやすくする薬です。スタチンとは効く場所が違うので、一緒に使うことがあります。」

「コレステロールを溶かす薬」ではなく、
吸収を抑える薬
と説明すると誤解が少なくなります。

フィブラート系・ペマフィブラート(パルモディア)|主に中性脂肪を下げる薬

主に下げるもの

TG:中性脂肪

フィブラート系薬は、主に中性脂肪が高い患者さんで使われる薬です。

脂質異常症の中でも、LDL-CではなくTG高値が目立つときに考える薬です。

同じ系統でどう使い分ける?

代表的な薬には、フェノフィブラート、ベザフィブラート、ペマフィブラートがあります。

薬剤使い分けのイメージ
フェノフィブラート(リピディル)TG高値をしっかり下げたい時の代表的選択肢
ベザフィブラート(ベザトール)古くからの継続処方で見かけることが多い。腎排泄なので腎機能確認を強く意識
ペマフィブラート(パルモディア)SPPARMα。VLDL-TGを「出にくく・処理しやすく」してTGを下げるイメージ
この中では一番新しい薬

フェノフィブラート・ベザフィブラートは腎排泄
ペマフィブラート(パルモディア)は肝代謝中心

パルモディアはVLDLを「出にくく・処理しやすく」する

パルモディアは、中性脂肪を下げる薬の中でも、

肝臓で作られるTG-richリポ蛋白、特にVLDLの代謝改善が関係しています。

ペマフィブラートはPPARαを選択的に活性化し、肝臓から出るVLDL-TGを減らす方向に働きます。
さらにLPL活性を高め、血中のTG-richリポ蛋白を処理しやすくします。
つまり、VLDLを「出にくく・処理しやすくする」薬と考えると整理しやすいです。

簡単に言えば、ペマフィブラートはVLDLを

「肝臓から出にくくする」
かつ
「血中で処理しやすくする」

薬です。

そのため、TG高値、特にVLDLやレムナントが関係しやすい高TG血症で考える薬と整理できます。

現場で特に確認したいこと

フィブラート系・ペマフィブラートで特に確認したいのは、次の3つです。

確認項目理由
腎機能腎機能低下時に注意が必要
胆石・胆のう疾患胆石関連の注意がある
スタチン併用横紋筋融解症など筋障害リスクに注意

薬局では腎機能が処方箋から見えないこともあります。

そのため、高齢者、糖尿病患者、利尿薬を使用している患者、多剤併用の患者では、可能であれば検査値を確認したいところです。

TG高値では生活習慣の聞き取りが重要

中性脂肪は、薬だけでなく生活習慣の影響を強く受けます。

アルコール
糖質・甘い飲み物
夜食
体重増加
運動不足

は注意して確認しましょう。

服薬指導では、

「この薬は中性脂肪を下げる薬です。中性脂肪はお酒や糖質の影響も受けやすいので、薬と一緒に生活習慣の見直しも大切です。」

と説明すると、患者さんにも伝わりやすくなります。

EPA製剤・オメガ3脂肪酸製剤|TGを下げる魚油由来の薬

主に下げるもの

TG:中性脂肪

EPA製剤やオメガ3脂肪酸製剤は、中性脂肪を下げる目的で使われる薬です。

エパデールとロトリガの違い

薬剤成分のイメージ現場での特徴
エパデールEPA製剤高脂血症のほか、閉塞性動脈硬化症の適応もある
ロトリガEPA+DHAを含むオメガ3脂肪酸製剤1日1回から使える。TG高値で使われる

ざっくり言うと、エパデールはEPA製剤、ロトリガはEPAとDHAを含むオメガ3脂肪酸製剤です。

魚の油の薬って説明してもええん?

入口としてはわかりやすいね。ただし、サプリではなく医療用医薬品だから、用量や注意点が決まっていることも伝えたいね。

注意点:EPA製剤・オメガ3脂肪酸製剤では、出血傾向に注意が必要です。

ロトリガの添付文書では、出血している患者には投与しないこととされ、止血が困難となるおそれがあるとされています。

また、ロトリガではLDL-Cが上昇する可能性もあるため、TGだけでなくLDL-Cの推移にも注意したい薬です。

服薬指導で聞きたいこと

EPA製剤やオメガ3脂肪酸製剤では、次のような確認が実践的です。

「血をサラサラにする薬を飲んでいませんか?」
「手術や抜歯の予定はありませんか?」
「鼻血やあざが増えていませんか?」
「胃のムカムカや魚っぽいげっぷはありませんか?」
「食直後に飲めていますか?」

特にロトリガのように食直後の指示がある薬では、
食事に含まれる油分やそれによって分泌される胆汁酸によって、薬の吸収率が劇的に高まるため
食後すぐに飲めているか
を確認することが大切です。

PCSK9関連薬|LDL-Cを強力に下げる注射薬

主に下げるもの

LDL-C

PCSK9を標的にする薬は、LDL-Cを強力に下げる薬です。

PCSK9はLDL受容体の分解に関わるタンパク質です。PCSK9の働きを抑えると、肝臓のLDL受容体が保たれ、血液中のLDL-Cを取り込みやすくなります。

「PCSK9阻害薬」より「PCSK9関連薬」と書くとわかりやすい

現在、実臨床で使われるPCSK9を標的にした薬は、皮下注射薬です。

ただし、エボロクマブとインクリシランでは作用の仕方が異なります。

薬剤分類・作用投与のイメージ
エボロクマブ:レパーサ抗PCSK9抗体薬。PCSK9そのものをブロック2週ごと、または4週ごと
インクリシラン:レクビオsiRNA製剤。肝臓でのPCSK9産生を抑える初回、3か月後、その後6か月ごと

エボロクマブは、PCSK9を直接ブロックする抗体薬です。

一方、インクリシランはPCSK9そのものを抗体でブロックする薬ではなく、肝臓でのPCSK9産生を抑えるsiRNA製剤です。

どんな患者さんに使う?

PCSK9関連薬は、誰にでも使う薬ではありません。

族性高コレステロール血症、冠動脈疾患、アテローム血栓性脳梗塞二次予防など、心血管イベントリスクが高い患者において、
スタチンを含む治療でもLDL-Cが十分に下がらない場合に有効な治療薬とされています。

現場での確認ポイント

PCSK9関連薬で薬剤師が確認したいのは、次のような点です。

確認項目理由
何のために使っているかLDL-Cを強力に下げる目的
併用薬スタチン・エゼチミブ併用が多い
投与間隔レパーサとレクビオで異なる
自己注射か医療機関投与か管理方法が変わる
LDL-Cの推移効果判定に重要
高リスク背景FH、二次予防などの確認

服薬指導では、

「投与間隔が薬によって違うので、スケジュール管理が大切です」

と伝えるとよいでしょう。

その他のLDL-C低下薬:陰イオン交換樹脂・プロブコール・ロミタピド

陰イオン交換樹脂

主に下げるもの:LDL-C

代表薬はコレスチミドです。

陰イオン交換樹脂は、腸管内で胆汁酸を吸着し、便中への排泄を促します。

胆汁酸が排泄されると、肝臓ではコレステロールを使って胆汁酸を作ろうとします。その結果、肝臓のLDL受容体が増え、血液中のLDL-Cが下がる方向に働きます。

他の薬も吸着してしまうため、他剤との服用間隔をあけることが重要です。

プロブコール

主に下げるもの:総コレステロール、LDL-C

プロブコールは、現在では頻繁に新規処方を見る薬ではありません。

ただし、家族性高コレステロール血症や黄色腫の文脈で登場することがあります。
QT延長には気をつけましょう。

ロミタピド

主に下げるもの:LDL-C

ロミタピドは、ホモ接合体家族性高コレステロール血症という非常に高リスクな患者さんで使われる特殊な薬です。

作用としては、MTPを阻害することで、肝臓からのVLDL分泌や小腸でのカイロミクロン形成を抑え、結果的にLDL-Cを下げる方向に働きます。

現場での使い分け:LDL-Cが高いのか、TGが高いのか

LDL-Cが高い場合

LDL-C高値では、基本はスタチンが中心です。

スタチンだけで目標に届かない場合、よく使われるのがエゼチミブです。

さらに、家族性高コレステロール血症や二次予防など高リスクで、スタチンやエゼチミブを使ってもLDL-Cが十分に下がらない場合には、PCSK9関連薬が選択肢になります。

LDL-C高値のざっくりした流れ

  1. 生活習慣改善
  2. スタチン
  3. エゼチミブ追加
  4. 高リスクならPCSK9関連薬を検討
  5. 特殊例ではロミタピド、プロブコール、陰イオン交換樹脂など

TGが高い場合

TG高値では、薬だけでなく生活習慣の影響が大きくなります。

特に、アルコール・糖質・肥満 は重要です

薬としては、フィブラート系、ペマフィブラート、EPA製剤、オメガ3脂肪酸製剤が候補になります。

TG高値のざっくりした流れ

  1. 飲酒、糖質、体重、糖尿病、食習慣を確認
  2. TG高値が目立つ場合はフィブラート系・ペマフィブラート
  3. 併用薬や腎機能、出血リスクを見ながらEPA・オメガ3も検討
  4. TGが非常に高い場合は急性膵炎リスクも意識

LDLを下げる薬か、TGを下げる薬かごっちゃになってくるなぁ

フィブラートの「ト」トリグリ(TG)
魚の油は脂肪が少なくヘルシーだから、EPAとオメガ-3系みたいな感じで覚えとくと忘れないかも、その他はLDLを下げる薬とまずは覚えてから区分けするといいよ

服薬指導でよく聞かれる質問

Q. コレステロールの薬は夜に飲む方がいいですか?

スタチンでは、半減期やコレステロール合成の日内変動から、薬によっては夕食後や就寝前が意識されることがあります。(スタチンについてはこちらを参照

一方で、スタチン以外の脂質異常症治療薬は、一律に「夜がよい」とは言えません。

たとえば、エゼチミブは1日1回食後、ロトリガは食直後など、薬ごとに用法が決まっています。

そのため、スタチン以外では、夜か朝かよりも、

  • 決められたタイミングで飲めているか
  • 食後・食直後の指示が守れているか
  • 他剤との間隔が必要ではないか
  • 飲み忘れにくい時間帯か

を確認する方が大切です。

Q. 中性脂肪の薬を飲めば、食事は気にしなくていいですか?

いいえ。

生活習慣病の基本はまずは生活から。特に食生活には気を付けることは必須です。

さらに、中性脂肪は、食事や飲酒、体重、糖代謝の影響を受けやすい項目です。

薬で下げることもありますが、アルコールや糖質が多いままだと、十分に下がらないことがあります。

説明としては、

「この薬は中性脂肪を下げる助けになります。ただ、中性脂肪はお酒や糖質、体重の影響を受けやすいので、生活習慣の見直しも一緒に大切です。」

と伝えるとよいでしょう。

Q. EPAやオメガ3はサプリと同じですか?

患者さんからは、
「魚の油ならサプリと同じですか?」
と聞かれることがあります。

説明としては、

「魚油由来の成分を使った薬ですが、
サプリではなく医師が治療目的で処方している医療用医薬品です。
用量や飲み方、注意点が決まっています。」

と伝えるとよいです。

また、出血している患者には使えない薬もあるため、抗血栓薬の併用、手術・抜歯予定、出血傾向の確認も大切です。

薬剤師が処方を見たときのチェックポイント

スタチン以外の脂質異常症治療薬では、次の視点で見ると整理しやすくなります。

見るポイント理由
LDL-C目的か、TG目的か薬の位置づけが変わる
腎機能フィブラート系・ペマフィブラートで重要
出血傾向EPA・オメガ3で重要
胆石・胆のう疾患フィブラート系で注意
スタチン併用筋障害リスクに注意
投与間隔PCSK9関連薬で重要
服用タイミング食後・食直後・他剤との間隔
生活習慣特にTG高値では重要

処方を見たときに、薬名だけで判断するのではなく、

「この患者さんはLDL-Cを下げたいのか」
「TGを下げたいのか」
「高リスクだから強力な治療が必要なのか」
「薬の注意点に引っかかる背景はないか」

を考えると、服薬指導や監査がしやすくなります。


まとめ

スタチン以外の脂質異常症治療薬は、種類が多く複雑に見えます。

しかし、現場ではまず、

  • LDL-Cを下げたい薬なのか
  • TGを下げたい薬なのか
  • 高リスク患者に使う特殊な薬なのか

で整理すると、かなり見通しがよくなります。

LDL-Cが主役なら、エゼチミブ、PCSK9関連薬、陰イオン交換樹脂、プロブコール、ロミタピドなど。
TGが主役なら、フィブラート系、ペマフィブラート、EPA製剤、オメガ3脂肪酸製剤など。

そして薬剤師としては、薬効だけでなく、

腎機能
胆石・胆のう疾患
出血傾向
注射薬の管理
相互作用
服用タイミング
食事・飲酒・糖質の聞き取り

を確認することが大切です。

参考文献

・日本動脈硬化学会:PCSK9阻害薬適正使用に関する指針 2024改訂版
・日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版/脂質異常症診療ガイド2023年版

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この記事を書いた人

Yukiのアバター Yuki 管理薬剤師

調剤薬局で15年、管理薬剤師として13年勤務。
現在は学校薬剤師として小学校・中学校にも関わりながら、薬剤師向けサイト「PharmaNote」を運営しています。

薬剤師としての現場経験と、テレビ・アニメ作編曲家としての表現の経験を活かし、やさしく親しみやすい情報発信を心がけています。

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