脂質異常症とは?薬剤師がまず見る検査値とリスクの考え方

脂質異常症とは?薬剤師がまず見る検査値とリスクの考え方

目次

LDL・HDL・中性脂肪・non-HDLについて

LDLが高いと何が問題なのか
HDLが低いとなぜよくないのか
中性脂肪とコレステロールは何が違うのか

は、意外とわかりにくいところです。

この記事では、薬の話に入る前に、脂質異常症の検査値とリスクを整理します。

薬剤師向けには「どの検査値をどう見るか」、一般の方には「健診結果をどう受け止めればよいか」がわかるように、できるだけやさしく解説します。

ひより

健診でLDLとかTGとか出てくるけど、結局どれを見ればいいん?

ひより

まずはLDL-C、HDL-C、TG、non-HDL-Cをセットで見るといいよ。
VLDLは直接測ることは少ないけど、TG高値を理解するうえで押さえておきたいね。

まず結論:脂質異常症はこの5つを見る

脂質異常症では、LDL-Cだけを見ればよいわけではありません。

まず押さえたいのは、次の5つです。

見る項目意味現場での見方
LDL-C悪玉高いと動脈硬化リスク
HDL-C善玉低いとリスク
TG中性脂肪高いと動脈硬化・膵炎に注意
non-HDL-CHDL以外の脂質をまとめた数値TG高値・糖尿病で特に便利
VLDLTGを運ぶ粒子TG高値とLDL・レムナントをつなぐ

コレステロールを見るときは、LDLだけを見ればよいわけではありません。

LDL、HDL、TG、non-HDLをセットで見る

これが基本です。

LDL-Cは動脈硬化リスクの中心ですが、HDL-Cが低い場合やTGが高い場合もリスク評価には重要です。
さらにTGが高い人では、VLDLやレムナントが増えている可能性があり、LDL-Cだけでは見えにくいリスクがあります。

そのため、薬剤師が検査値を見るときは、

  • LDL-C:高くないか
  • HDL-C:低くないか
  • TG:空腹時か随時か、高くないか
  • non-HDL-C:HDL以外の脂質が多くないか
  • VLDL:TG高値の背景として意識する

という順番で見ると整理しやすくなります。

脂質異常症は、単に「LDLが高い病気」ではなく、
血管に負担をかける脂質バランスを総合的に見る疾患
と考えると、現場で使いやすくなります。

検査値の目安

脂質異常症の診断では、主に次の数値が目安になります。

項目目安評価
LDL-C140mg/dL以上高LDLコレステロール血症
HDL-C40mg/dL未満低HDLコレステロール血症
TG空腹時 150mg/dL以上高TG血症
TG随時 175mg/dL以上高TG血症
non-HDL-C170mg/dL以上高non-HDLコレステロール血症

ただし、ここで大切なのは、
目標値は全員同じではない
ということです。

たとえば、

  • 心筋梗塞・狭心症の既往がある
  • 脳梗塞の既往がある
  • 糖尿病がある
  • 慢性腎臓病 CKD がある
  • 高血圧がある
  • 喫煙している

このような場合は、より厳格な管理が必要になることがあります。

薬剤師が現場で見るときは、
「基準値を超えているか」だけでなく、「その人の背景リスクで目標が変わる」
という視点が大切です。

ひより

LDLだけ見ればええんやないんや

ひより

LDL-Cは大事だけど、それだけでは不十分だね。
HDL-C、TG、non-HDL-C、背景リスクまで見ると、患者さんごとのリスクが整理しやすいよ。

コレステロールは悪者ではない

コレステロールは悪者扱いされますが、実際には体に必要な脂質です。

  • 細胞膜の材料になる
  • ホルモンの材料になる
  • 胆汁酸の材料になり、脂肪の消化を助ける

といった大切な役割があります。

問題は、
LDLコレステロールが必要以上に増え、血管の壁にたまりやすくなること
です。

コレステロールは体に必要。
でも、多すぎると血管を傷める。

まずはこのイメージで押さえるとわかりやすいです。

LDLとHDL、VLDLはどう違う?

コレステロールや中性脂肪は脂質なので、そのままでは血液中をうまく移動できません。
そのため、リポタンパクという粒子に包まれて運ばれます。

イメージとしては、血液中を走る「運び屋」です。

項目何をしている?イメージ
LDLコレステロールを全身へ届ける配達トラック
HDL余ったコレステロールを回収する回収車
TGエネルギーとして使う脂肪荷物そのもの
VLDL肝臓で作られたTGを全身へ運ぶTGを運ぶ大型トラック

LDL-Cが高い状態が続くと、血管の壁に入り込みやすくなり、動脈硬化につながります。

HDL-Cは余ったコレステロールを回収する働きがあるため、低いとリスクが上がります。

TGは食事、飲酒、糖質摂取、肥満、糖尿病などの影響を受けやすい検査値です。高いと動脈硬化に関わり、かなり高い場合は急性膵炎にも注意が必要です。

VLDLはTGを運ぶリポタンパクです。TGが高い人ではVLDLやレムナントが増えている可能性があり、LDL-Cだけでは見えにくいリスクがあります。

つまり、TG高値を見るときは、VLDLやnon-HDL-Cも意識すると検査値を整理しやすくなります。

ここで押さえたいポイント

LDL、HDL、TG、VLDLは、それぞれ別々に見える検査値ですが、実際にはつながっています。

特に大事なのは、

  • LDL-Cは、動脈硬化リスクの中心
  • HDL-Cは、低いとリスク
  • TGは、VLDLやレムナントと関係
  • VLDLは、TG高値とLDL・non-HDL-Cをつなぐ存在

この4つを押さえると、脂質異常症の検査値が整理しやすくなります。

そのため、脂質異常症ではLDL-Cだけでなく、HDL-C、TG、non-HDL-Cもセットで確認することが大切です。

コレステロールが高いと血管で何が起きる?

LDL-Cが高い状態が続くと、LDLが血管の壁の内側に入り込みやすくなります。

血管の壁に入り込んだLDLは酸化され、酸化LDLになります。

この酸化LDLをマクロファージという免疫細胞が取り込みます。
その結果、泡沫細胞が増え、血管の壁にプラークという脂質のかたまりができていきます。

流れを簡単にまとめると、

  1. LDLが血管の壁に入り込む
  2. 酸化LDLになる
  3. マクロファージが取り込む
  4. プラークができる
  5. 血管が狭くなる
  6. プラークが破れると血栓ができる
  7. 心筋梗塞や脳梗塞につながる

というイメージです。

動脈硬化が怖いのは、自覚症状がほとんどないまま進むことです。

だからこそ、健康診断の数値で早めに気づくことが大切です。

脂質異常症で起こりやすい病気

脂質異常症の問題は、動脈硬化を進めて、さまざまな病気につながることです。

代表的なものは次のとおりです。

関係する部位起こりやすい病気・変化
心臓狭心症、心筋梗塞
脳梗塞
末梢動脈疾患
網膜の血管変化
皮膚・腱黄色腫、アキレス腱肥厚
膵臓高TGによる急性膵炎

特に一般の方には、
コレステロールは心臓だけでなく、脳・足・目・皮膚・腱にも関係することがある
と伝えるとイメージしやすくなります。

non-HDL-C と LDL/HDL比

non-HDL-C

non-HDL-Cは、総コレステロールからHDL-Cを引いた値です。

non-HDL-C = 総コレステロール − HDL-C

LDLだけでなく、VLDLやレムナントなども含むため、
HDL以外の“血管に注意したい脂質”をまとめて見る指標
として使えます。

特に、

  • TGが高い人
  • 糖尿病がある人
  • メタボリックシンドロームがある人
  • LDLだけではリスクが見えにくい人

では参考になります。

LDL/HDL比

一方、LDL/HDL比は、LDL-CをHDL-Cで割った値です。

LDL/HDL比 = LDL-C ÷ HDL-C

LDLとHDLのバランスを患者さんに説明するときに便利です。
ただし、日本のガイドラインで正式な治療目標として使うものではありません。

LDL/HDL比目安
2.0以下比較的よいバランス
2.5以上注意したい
3.0以上リスク高めの目安

※ただし、LDL/HDL比は日本のガイドラインで正式な治療目標として使うものではありません。

あくまで、
LDLとHDLのバランスを説明するための補助的な指標
として使うのがよいです。

薬剤師が現場で使うなら、

non-HDL-CHDL以外の“血管に注意したい脂質”をまとめて見る指標、TG高値、糖尿病、メタボで参考
LDL/HDL比「LDLとHDLの場rナンスを説明する補助指標、患者さんへの説明に便利

と分けて考えると整理しやすくなります。

家族性高コレステロール血症 FH は見逃さない

脂質異常症の中には、生活習慣だけでは説明できないタイプがあります。

代表的なのが、家族性高コレステロール血症 FHです。

FHは、生まれつきLDL-Cが高くなりやすい遺伝性疾患です。

次のような場合は注意が必要です。

  • LDL-Cがかなり高い
  • 若い年齢で狭心症や心筋梗塞を起こしている
  • 家族にも高LDL-Cや若年性心疾患がある
  • アキレス腱が太い
  • 黄色腫がある

FHでは、食事や運動だけでは十分に下がらないことも多く、早期から医療機関での評価と治療が必要になります。

薬剤師としては、
「生活習慣だけの問題ではない高LDL-Cがある」
という視点を持っておきたいところです。

薬剤師が現場で見るポイント

薬剤師が脂質異常症の検査値を見るときは、次の点を意識すると整理しやすくなります。

見るポイント確認したいこと
LDL-C動脈硬化リスクの中心。既往歴や糖尿病の有無も見る
HDL-C低値なら喫煙、運動不足、肥満なども確認
TG空腹時か随時か、飲酒・糖質・糖尿病も確認
non-HDL-CTG高値や糖尿病では特に参考にする
家族歴FHを疑う手がかりになる
既往歴心筋梗塞、狭心症、脳梗塞があれば管理目標が変わる
薬剤性ステロイド、利尿薬、β遮断薬なども背景として確認

ポイントは、

検査値を単独で見ないこと

LDL-Cが同じ140mg/dLでも、背景リスクによって意味は変わります。

脂質異常症は、
数字だけでなく、血管リスク全体を見る疾患
と考えると現場で使いやすくなります。

まとめ

脂質異常症では、LDL-Cだけでなく、HDL-C、TG、non-HDL-Cをセットで見ることが大切です。

この記事のポイントは次のとおりです。

  • コレステロールは体に必要な物質
  • 問題はLDL-Cが高くなり、血管にたまりやすくなること
  • HDL-Cは余ったコレステロールを回収する働きがある
  • TG高値はVLDLやレムナント、膵炎リスクにも関係する
  • non-HDL-CはHDL以外の動脈硬化に関わる脂質をまとめて見られる
  • LDL/HDL比は患者説明に便利だが、補助的に使う
  • 脂質異常症は心臓、脳、足、目、皮膚、腱、膵臓にも関係する
  • 著明なLDL-C高値では家族性高コレステロール血症 FH を見逃さない
  • 検査値は数字だけでなく、背景リスクとセットで見る

脂質異常症は、自覚症状がないまま進みやすい病気です。

だからこそ、健康診断の数値を
「少し高いだけ」
で終わらせず、血管を守るためのサインとして読み取ることが大切です。

次回は、脂質異常症に使われる薬について解説します。
スタチン、エゼチミブ、フィブラート、EPA製剤、PCSK9阻害薬など、それぞれの薬がどの脂質に効くのか、薬剤師が現場で確認したい注意点も含めて整理します。

※本記事は情報提供を目的としたものです。個別の診断・治療については、医師・薬剤師などの専門職にご相談ください。

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この記事を書いた人

Yukiのアバター Yuki 管理薬剤師

調剤薬局で15年、管理薬剤師として13年勤務。
現在は学校薬剤師として小学校・中学校にも関わりながら、薬剤師向けサイト「PharmaNote」を運営しています。

薬剤師としての現場経験と、テレビ・アニメ作編曲家としての表現の経験を活かし、やさしく親しみやすい情報発信を心がけています。

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