ステロイド軟膏の正しい使い方ガイド|FTU・強さランク・保湿剤との併用まで徹底解説
「ステロイドって怖い」と感じている人は多いですが、正しく使えば非常に頼れる薬です。
この記事では、量の目安・薬の強さ・保湿剤との使い分けなど、知っておくべきことをまとめました。
ステロイド外用薬とは?
ステロイド外用薬は、湿疹・皮膚炎・アトピー性皮膚炎などで頻用される薬剤です。
服薬指導では「ステロイドは怖い薬ではありません」と説明するだけでなく、使用量・強さ・塗布部位・使用期間・感染兆候を確認することが重要です。
特に外用薬では、患者さんが自己判断で
「薄く少しだけ塗る」
「症状が良くなったら急にやめる」
「保湿剤と混ぜて広範囲に塗る」
など、意図しない使い方をしていることがあります。むしろ少なすぎる量で使い続けるほうが、炎症が長引いて皮膚へのダメージが増えることもあります。
この記事では、薬剤師がステロイド外用薬の服薬指導で確認したいポイントを、実務目線で整理します。
確認したい5つのポイント
ステロイド外用薬の指導では、まず次の5点を確認します。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| ① 強さランク | 処方薬・市販薬の強さが部位に合っているか |
| ② 塗布部位 | 顔・陰部・まぶた・小児では特に注意 |
| ③ 使用量 | 少なすぎて効いていない可能性がないか |
| ④ 使用期間 | 長期連用・急な中止になっていないか |
| ⑤ 感染兆候 | 水虫・ヘルペス・とびひ・化膿などが疑われないか |
ステロイド外用薬は「強さ」だけで判断するのではなく、どこに、どれくらい、どの期間使うかまで含めて確認する必要があります。
適切な使用量:1FTUとは?

FTU(フィンガーチップユニット)
1FTU = 大人の人差し指の先から第1関節までの量 ≈ 約0.5g
これが基準の1単位です。チューブの口径が約5mm(一般的な25g〜50gチューブ)で絞り出したときの量に相当します。
1FTUで塗れる面積
1FTU ≈ 手のひら2枚分(体表面積の約2%)
| 部位 | 目安のFTU |
|---|---|
| 顔全体 | 2.5 FTU |
| 首 | 1 FTU |
| 上腕(片腕) | 1.5 FTU |
| 前腕(片腕) | 1 FTU |
| 手(片手) | 0.5 FTU |
| 胸・お腹 | 7 FTU |
| 背中・お尻 | 7 FTU |
| 大腿(片足) | 2 FTU |
| 下腿(片足) | 1.5 FTU |
| 足裏・足甲(片足) | 2 FTU |
患者さんには、
と説明すると伝わりやすいです。
塗り方のポイント
服薬指導では、単に「適量を塗ってください」と伝えるだけでは不十分です。
患者さんは副作用を心配して、必要量よりかなり少なく使っていることがあります。
特にアトピー性皮膚炎や湿疹では、過少使用によって炎症が長引き、結果的に皮膚状態が悪化することがあります。
「どのくらい塗っているか」「何日で1本使っているか」を確認すると、実際の使用量を把握しやすくなります。
- 患部に薬をポンポンと置いてから、やさしく広げる
- 「薬がほんのりテカる程度」が適量
- 擦り込む必要はない(こすると皮膚へのダメージになる)
- 厚く塗っても効果は上がらない。薄すぎると効きが悪く、結果的に炎症が長引く

ステロイドって聞くとなんか怖い感じがあるなぁ



実際そういう人が多くて、中途半端に使ってしまう人が少なくないから服薬指導は気を付けないとね。
ステロイドの強さ:5段階ランク一覧
ステロイド外用薬は作用の強さで5段階に分類されています。同じ薬でも剤形(軟膏・クリーム・ローション)によって強さが微妙に変わることがあります。
| ランク | 英語表記 | 代表的な一般名 | 代表的な製品名 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ群(最強) | Strongest | クロベタゾールプロピオン酸エステル | デルモベート |
| ジフロラゾン酢酸エステル | ダイアコート | ||
| Ⅱ群(とても強い) | Very Strong | モメタゾンフランカルボン酸エステル | フルメタ |
| ジフルプレドナート | マイザー | ||
| ベタメタゾンジプロピオン酸エステル | リンデロン-DP | ||
| Ⅲ群(強い) | Strong | ベタメタゾン吉草酸エステル | リンデロン-V、ベトネベート |
| デキサメタゾン吉草酸エステル | ボアラ | ||
| フルオシノロンアセトニド | フルコート | ||
| デプロドンプロピオン酸エステル | エクラー | ||
| Ⅳ群(弱め) | Mild | ヒドロコルチゾン酪酸エステル | ロコイド(市販薬あり) |
| クロベタゾン酪酸エステル | キンダベート | ||
| アルクロメタゾンプロピオン酸エステル | アルメタ | ||
| Ⅴ群(弱い) | Weak | プレドニゾロン | プレドニゾロン軟膏 |
| ヒドロコルチゾン酢酸エステル | コルテス(市販薬あり) |
強さの選び方の基本
- 症状が強い・皮膚が厚い部位 → 強めのランク
- 顔・首・デリケートゾーン・子ども → 弱めのランク(Ⅳ〜Ⅴ群が原則)
- 医師が処方した場合は、必ず指示されたランクを使う
部位別の吸収率:場所によって効き方が全然違う
同じ薬・同じ量でも、塗る場所によって皮膚への吸収率は大きく異なります。前腕内側を「1.0」としたときの比較がこちらです(Feldmann et al., 1967)。


| 部位 | 吸収率(前腕内側比) | 注意度 |
|---|---|---|
| 陰嚢(いんのう) | 42倍 | 最高注意 |
| 頬(ほお) | 13倍 | 高注意 |
| 額 | 6倍 | 高注意 |
| 頭皮 | 3.5倍 | 注意 |
| 前腕内側 | 1.0(基準) | — |
| 手のひら | 0.83倍 | 比較的安全 |
| 足底 | 0.14倍 | 最も吸収しにくい |
このため、顔・まぶた・陰部などでは、強いステロイドの長期使用に注意が必要です。
特に顔や陰部では、皮膚萎縮、毛細血管拡張、酒さ様皮膚炎などの局所副作用に注意します。
患者さんには、
「同じ薬でも、顔や陰部は体より吸収されやすいので、自己判断で使い回さないでください」
と説明すると分かりやすいです。
なぜ吸収率が重要なの?
- 吸収率が高い部位は副作用が出やすい
- 顔や陰部に強いステロイドを長期使用すると、皮膚が薄くなる・毛細血管が浮き出るなどのリスクが高まる
- 顔にはⅣ群(マイルド)以下が基本。Ⅰ・Ⅱ群を顔に使う場合は医師の管理のもとで
また、吸収率が上がるケースとして以下も覚えておきましょう:
- 傷・キズなど角層がはがれた部位
- 乳幼児の皮膚(大人より薄い)
- ラップ・包帯などで密封した場合(ODT法)



塗り薬なら副作用はないと思って、自由に使っている人もいるから注意だね!
保湿剤との使い方
一緒に使っていい?
はい、問題ありません。 ステロイド外用薬と保湿剤(ヒルドイド・ワセリンなど)は同じ部位に併用できます。
塗る順番は?
一般的な推奨:保湿剤を先に塗り、その後ステロイドを患部に塗る
- 保湿剤を広い範囲に塗る(全体的なスキンケア)
↓ 5分ほど待つ(完全に浸透させる必要はない) - ステロイドを炎症のある部位だけに塗る
この順番を勧める理由は、先にステロイドを塗ると、保湿剤を広げるときに必要のない部位まで一緒に広がってしまうリスクがあるためです。
部位別の使い分け
| 状態 | 使う薬 |
|---|---|
| 炎症・かゆみがある箇所 | ステロイド軟膏 |
| 症状が落ち着いた箇所 | 保湿剤のみ |
| 普段のスキンケア全体 | 保湿剤等 |
乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、炎症が再燃しやすくなります。症状がなくても保湿を続けることが再発予防に重要です。
注意事項まとめ
副作用について
局所性副作用(塗った部位に出る)
- 皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)
- ニキビ・毛嚢炎
- 毛細血管拡張(赤みが目立つ)
- 多毛
- 色素沈着・脱色
これらは長期連用した場合に起こりやすく、正しい使用量・期間を守れば過度に心配する必要はありません。
全身性副作用
市販薬を正しく使う分には、全身への影響はほぼ問題になりません。
ただし、Ⅰ・Ⅱ群の強いステロイドを広い範囲に長期使用した場合などは医師の管理が必要です。
使用期間の目安
| 種類 | 目安 |
|---|---|
| 市販薬 | 最大2週間。5〜6日使っても改善しなければ使用中止して受診 |
| 処方薬 | 医師の指示に従う(症状次第で長期使用することも) |
突然やめるのはNG
「症状が良くなったから」と自己判断で突然中止すると、皮膚が赤くほてる・腫れるなどの悪化が起きることがあります。これは元の炎症が再燃するものであり、本来の「リバウンド」とは異なります。中止するときは医師に相談してから行いましょう。
特に注意が必要なケース
- 顔・まぶた:吸収率が高く、長期使用は皮膚萎縮・眼圧上昇のリスクあり
- デリケートゾーン:吸収率が極めて高い。原則Ⅳ群以下を短期間のみ
- 乳幼児・子ども:皮膚が薄く吸収率が高い。体表面積に対する使用量にも注意
- 傷がある部位:吸収が過剰になるリスクあり
- 妊娠中:使用できる薬はあるが、必ず医師に相談する
よくある誤解
| 誤解 | 正しい知識 |
|---|---|
| 「ステロイドは体に蓄積する」 | 外用薬の成分は体内に蓄積されない |
| 「厚く塗るほどよく効く」 | 適量(テカる程度)で十分。過剰に塗っても効果は変わらない |
| 「少量なら副作用はゼロ」 | 少量でも長期連用すれば局所副作用は起こりうる |
| 「症状が良くなったらすぐやめていい」 | 急な中止はNG。医師の指導のもとで段階的に減らす |
プロアクティブ療法(再発予防)
症状が落ち着いたあとも週1〜2回ステロイドを塗り続けることで再発を予防する方法です。アトピー性皮膚炎などの慢性的な皮膚疾患で広く用いられます。
- 急性期:毎日ステロイドを塗って炎症を鎮める
- 寛解期(落ち着いた状態):週1〜2回のステロイド+毎日の保湿剤で維持
- 目的は「完全に症状がなくなってから守る」こと
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 使用量 | 1FTU(0.5g)= 手のひら2枚分 |
| 強さ選び | 部位・症状に合わせて5段階から選ぶ |
| 保湿剤との順番 | 保湿剤→ステロイドが基本 |
| 吸収率が高い部位 | 顔・陰部は特に注意。弱いランクを使う |
| 使用期間 | 市販薬は最長2週間。自己判断で中止しない |
ステロイド外用薬は「怖い薬」ではなく、正しく使えば皮膚疾患の治療に欠かせない薬です。迷ったときは薬剤師や皮膚科医に相談することが最善です。
参考資料
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や治療については必ず医師・薬剤師にご相談ください。




コメント