災害時、インスリンの針は繰り返し使ってもいい?
インスリンの注射針は、通常は毎回新しいものへ交換することが原則です。
しかし、地震や豪雨などの災害では物流が止まり、注射針やインスリンが手に入らなくなることがあります。
そのような状況では、日本くすりと糖尿病学会は次のように示しています。
つまり、災害時に物資が不足している場合は、やむを得ない対応として同じ針を再使用することが認められています。
再使用するときの注意点
針を再使用する場合は、次の点に注意しましょう。
- 他人と針を共有しない
- 針が曲がったり変形した場合は使用しない
- 注射後は、できれば針を外して保管する
- 新しい針が入手できたら、通常どおり毎回交換に戻す
また、同じ針を繰り返しカートリッジへ刺すことで、ゴム栓が傷つき(コアリング)、液漏れの原因になることもあります。
インスリンの保管も重要
停電などで冷蔵庫が使えなくなると、「インスリンはもう使えないのでは?」と心配になる方も少なくありません。
しかし、使用中のインスリンであれば、すぐに使用できなくなるわけではありません。
- 未使用品は2〜8℃で保管し、凍結は厳禁
- 使用中のインスリンは通常どおり室温で保管可能
- 真夏など30℃を超える環境では、保冷剤をタオルで包んで保冷バッグに入れるなど、高温を避ける工夫をする
- 保冷剤を直接当てたり、凍らせたりしない
- 直射日光や車内への放置は避ける
また、停電中でも冷蔵庫の開閉をできるだけ控えることで、庫内の温度上昇を遅らせることができます。
災害時には「冷蔵庫が使えない=インスリンを廃棄」と考えるのではなく、できるだけ涼しい場所で保管し、継続して使用することが大切です。
補足
製品によって違いはありますが、多くのインスリン製剤は使用開始後は30℃以下で約28日間保存可能とされています
(製剤によって42日・56日など異なるものもあります)。そのため、停電が数時間~1日程度であれば、直ちに使用できなくなる可能性は低いと考えられます。)
このあたりは患者さんが誤解しやすいポイントなので、
というメッセージを伝えることが重要です。
アルコール綿がない場合は?
災害時にはアルコール綿が不足することもあります。
その場合は、注射部位に汚れがなければ、必ずしもアルコール消毒は必要ありません。
汚れている場合は、水で濡らした清潔なタオルやウェットティッシュなどで拭き、十分乾いてから注射します。
「アルコール綿がないからインスリンを打たない」という判断は避けることが大切です。
まとめ
災害時は、平時と同じ対応ができないこともあります。
そのような状況では、針を再使用するリスクよりも、インスリンを中断するリスクの方が大きいと考えられています。
新しい物資が届くまでは学会の指針に沿って対応し、環境が整ったら通常どおり「毎回新しい針へ交換」「適切な保管方法」に戻しましょう。
参考文献
- 日本くすりと糖尿病学会. 主に災害時のインスリン自己注射に関して(2024年1月7日現在)
- 日本くすりと糖尿病学会. 高温環境下でのインスリン製剤の保管に関する提案(2020年4月2日)
- 日本くすりと糖尿病学会. 糖尿病治療用注射製剤の自己注射や血糖自己測定用アルコール消毒綿不足時の対処について(例示)(災害時資料内で参照)


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