ARBの違い・使い分け|なぜアジルサルタン?各薬剤の特徴を比較

ARB7剤の違い・使い分け

目次

なぜアジルサルタン?用量・適応・調剤上の注意を比較

高血圧の処方でよく見かけるARB。

「ARBなら、どれを使っても同じなの?」
「なぜアジルサルタンで、オルメサルタンではないの?」
「持参薬を別のARBへ変更するとき、何mgが目安?」

と迷うことはないでしょうか。

この記事では、代表的なARB7剤の使い分けを、現場で確認しやすい形に整理します。

ARB7剤の特徴

薬剤現場で注目したい特徴
アジルサルタンしっかり降圧したい場合に意識されやすい
オルメサルタン5mgから開始可能。
一包化長引く下痢に注意
テルミサルタン20mgから開始。肝・胆道系の状態に注意
カンデサルタン慢性心不全・腎実質性高血圧症・小児高血圧の適応
ロサルタン蛋白尿を伴う2型糖尿病性腎症の適応。尿酸への作用も特徴
イルベサルタン国内適応は高血圧症。血圧反応や配合剤を含めて選択
バルサルタン国内適応は高血圧症。小児高血圧にも使用可能

日本では7種類のARBが使用されており、JSH2025でもARBは主要な降圧薬の一つに位置づけられています。
ただし、国内ガイドラインでARB7剤の明確な使い分けが決められているわけではありません。

標準用量と切替時の目安

成人高血圧症では、次の用量が「通常量」や院内での切替目安として用いられることがあります。

ARB代表的な用量
イルベサルタン100mg
バルサルタン80mg
カンデサルタン8mg
ロサルタン50mg
テルミサルタン40mg
オルメサルタン20mg
アジルサルタン20mg(強め)

「イルベサルタン100mg、バルサルタン80mg、カンデサルタン8mg」のように覚えると、用量を整理しやすくなります。
ただし、これは厳密な力価換算ではありません。

病院や地域のフォーミュラリでも切替用量表が作成されていますが、換算量はあくまで目安とされ、切替後の血圧、腎機能、K値の確認が求められています。

アジルサルタンとオルメサルタンはどう違う?

アジルサルタン

アジルサルタンは、降圧力を重視するときに候補になりやすいARBです。

アジルサルタン20~40mgは、カンデサルタン8~12mgより診察室血圧と24時間血圧を大きく低下させました。
特に、夜間や早朝の血圧に対する効果も報告されています。

成人では通常20mgですが、低用量から慎重に開始したい場合には10mgなども選択できます。

オルメサルタン

オルメサルタンは5~10mgから開始でき、通常10~20mgです。

一方、まれに体重減少を伴う重度の下痢や腸絨毛萎縮が報告されています。長期間続く原因不明の下痢がある場合は、薬剤性も確認します。

また一包化の際に注意が必要な薬です。(後述参照)

ひより

アジルサルタンは、オルメサルタンの上位版ではないん?

しっかり下げるならアジルサルタンが候補になるけど、低用量から始めたい場合はオルメサルタン5mgが使いやすいこともあるね。患者さんに必要な降圧幅で選ぶことが大切だよ。

ロサルタンを選ぶ理由

ロサルタンには、国内で次の効能があります。

  • 高血圧症
  • 高血圧および蛋白尿を伴う2型糖尿病性腎症

糖尿病性腎症については、高血圧に加えて尿中アルブミン/クレアチニン比300mg/g以上の蛋白尿を伴う患者が対象です。
また、ロサルタンには尿酸排泄を促進し、血清尿酸値を低下させる方向の作用があります。
高尿酸血症や痛風歴がある患者では、ARBを選ぶ際の判断材料になります。

イルベサルタンも尿酸値を下げる?

イルベサルタンでも血清尿酸値が低下した研究がありますが、
ロサルタンとの直接比較では、ロサルタンの方が尿酸低下作用は明確でした。

カンデサルタンを選ぶ理由

カンデサルタンには、国内で次の適応があります。

  • 高血圧症
  • 腎実質性高血圧症
  • 慢性心不全
  • 1歳以上の小児高血圧症

カンデサルタンを見たときは、単なる降圧目的と決めつけず、心不全の病名やβ遮断薬、利尿剤、SGLT2阻害薬などの併用も確認します。

テルミサルタンを選ぶときの注意

テルミサルタンは通常20mgから開始し、40mgを基本用量として、最大80mgまで使用できます。
ただし、肝障害がある患者では最大40mgです。また、胆汁の分泌が極めて悪い患者や重篤な肝障害のある患者には使用できません。

  • 重篤な肝障害・胆汁分泌が極めて悪い:禁忌
  • 肝障害がある:最大40mg
  • 80mgへの増量が必要:肝機能を確認し、ほかのARBも含めて検討

「肝機能障害があれば必ず別のARB」というわけではありませんが、用量上限を確認しておきたい薬です。

イルベサルタンとバルサルタンはどう見る?

イルベサルタンとバルサルタンは、成人では主に高血圧症に使用されます。
薬剤固有の適応よりも、これまでの血圧反応、配合剤、医療機関の採用薬、忍容性などから選ばれていることも少なくありません。

小児に使えるARBは?

・カンデサルタン:1歳以上
・アジルサルタン:2歳以上
・バルサルタン:6歳以上

小児適応のあるARBもありますが、対象年齢・体重別用量・承認されている製品が異なるため、最新の添付文書を確認します。

一包化・OD錠・簡易懸濁の実務ポイント

オルメサルタンの一包化

オルメサルタンをメトホルミンやカモスタットなどと一包化し、高温多湿条件で保存すると、相手側の製剤が変色することがあります。
同時に服用できないわけではありませんが、同じ分包内での保存は避けます。

OD錠の有無

現在は、オルメサルタンだけでなく、アジルサルタン、カンデサルタン、テルミサルタンなどにも後発OD錠があります。

簡易懸濁

簡易懸濁の可否も、同じ成分であっても通常錠・OD錠・メーカーによって異なります。

例えば、沢井製薬のアジルサルタンOD錠では温湯で崩壊し、8Frチューブを通過した試験結果があります。
一方、テルミサルタン通常錠では完全に崩壊せず、コーティング破壊後に通過した製品があります。

採用している製品のインタビューフォームで確認する

のが基本です。

開始・変更後に確認すること

ARBを開始・増量・切り替えた後は、次の項目を確認します。

  • 血圧、めまい、ふらつき
  • 血清Cr・eGFR、血清K値
  • 脱水、食事摂取不良
  • NSAIDs、MRA、K保持性利尿薬、K製剤の併用

KDIGO 2024では、ACE阻害薬またはARBの開始・増量後、2~4週間以内に血圧、血清Cr、K値を確認することが示されています。
4週間以内に血清Crが30%を超えて上昇した場合は、脱水、NSAIDs、腎動脈狭窄などの原因を確認します。

また、ARBとACE阻害薬の併用は、高K血症や急性腎障害などのリスクを高めるため
、原則として避けます。妊婦または妊娠している可能性のある女性には使用できません。

まとめ

ARBはすべて同じAT1受容体を遮断する薬ですが、用量、国内適応、剤形、調剤上の注意には違いがあります。

現場では、次のように整理すると分かりやすくなります。

  • アジルサルタン:しっかり降圧したい場合に意識。切替後の過度な降圧に注意
  • オルメサルタン:5~10mgから開始可能。メトホルミンなどとの一包化を避ける
  • テルミサルタン:肝障害患者は最大40mg
  • カンデサルタン:慢性心不全、腎実質性高血圧、小児適応を確認
  • ロサルタン:蛋白尿を伴う2型糖尿病性腎症、尿酸への作用が特徴
  • イルベサルタン:尿酸低下の報告はあるが、ロサルタンほど明確ではない
  • バルサルタン:成人・小児高血圧に使用。継続性や配合剤も含めて選択

ARBを見たときは、単純な強さランキングではなく、

「どの程度下げたいのか」
「薬剤固有の適応があるのか」
「患者さんが安全に使える剤形・用量か」

の3点から確認すると、処方意図が見えやすくなります。

参考資料

  1. 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」
  2. 日本フォーミュラリ学会「ARBフォーミュラリ Ver.4.0」
  3. KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of CKD
  4. PMDA:アジルサルタン、オルメサルタン、カンデサルタン各添付文書
  5. PMDA:テルミサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン各添付文書
  6. Rakugi H, et al. Comparison of azilsartan with candesartan in Japanese patients with hypertension.
  7. Comparative effects of losartan and irbesartan on serum uric acid.
  8. 沢井製薬:アジルサルタン・テルミサルタン各製剤インタビューフォーム
  9. 御前崎市立御前崎総合病院「ARBの等価換算について」
  10. 日本赤十字社和歌山医療センター「ARBフォーミュラリ」

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この記事を書いた人

Yukiのアバター Yuki 管理薬剤師

調剤薬局で15年、管理薬剤師として13年勤務。
現在は学校薬剤師として小学校・中学校にも関わりながら、薬剤師向けサイト「PharmaNote」を運営しています。

薬剤師としての現場経験と、テレビ・アニメ作編曲家としての表現の経験を活かし、やさしく親しみやすい情報発信を心がけています。

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