ボノサップ400と800はどう使い分ける?除菌率・副作用・喫煙の影響を解説
ピロリ菌の一次除菌でよく処方される「ボノサップ」。
薬局ではボノサップパック400とボノサップパック800の2種類を見かけます。
「800の方が量が多いなら、最初から800の方が除菌しやすいのでは?」
と思ったことはないでしょうか。
実は最新のガイドラインでは、この疑問についてかなり明確な答えが示されています。
結論からいうと、基本的にはボノサップ400が推奨されます。
800に増量しても除菌率はほとんど上がらない一方で、副作用は増えることが分かっているためです。
では、400と800には何の違いがあり、800はどのようなときに使われるのでしょうか。
ボノサップ400と800の違いはクラリスロマイシンだけ
まずは中身を比べてみましょう。
| ボノサップ400 | ボノサップ800 | |
|---|---|---|
| ボノプラザン | 20mg×2回 | 20mg×2回 |
| アモキシシリン | 750mg×2回 | 750mg×2回 |
| クラリスロマイシン | 200mg×2回 | 400mg×2回 |
| 治療期間 | 7日間 | 7日間 |
つまり違うのは、クラリスロマイシン(CAM)の量だけ。
400ではCAM 400mg/日、800では800mg/日となります。
添付文書上も通常量はCAM 200mgを1日2回、必要に応じて1回400mgまで増量できるという位置付けです。
「だったら800の方が効きそう」ですが……
抗菌薬が倍になるので、
400mgより800mgの方が除菌率も高くなるのでは?
と思ってしまいます。
ところが、2024年改訂の「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」では、日本で行われた8つのRCTをまとめたメタ解析が示されています。
結果は、
CAM 400mg/日 vs 800mg/日
→ 除菌率に有意差なし
でした。
オッズ比は0.92(95%CI 0.73~1.17)で、800mgに増量しても明確な上乗せ効果は認められていません。
つまり、
ということです。
むしろ800では副作用が増える
ここが400を基本とする大きな理由です。
同じガイドラインでは、安全性について4つのRCTをまとめています。
その結果、
ことが示されました。
オッズ比は、
1.35(95%CI 1.08~1.68)
です。
重篤な副作用が明確に増えたわけではありませんが、クラリスロマイシンはもともと
- 苦味・味覚異常
- 下痢
- 悪心
- 腹部症状
などを起こすことがあります。
実際、ボノプラザンを用いた国内第III相試験でも、副作用は20.4%に認められ、主なものは下痢と味覚異常でした。
除菌率が変わらないのであれば、あえてCAMを倍量にして副作用のリスクを上げるメリットは小さい。
そのため最新ガイドラインでは、
とはっきり記載されています。
では、なぜ800があるのか?
ここで気になるのが、
「それなら800は何のためにあるの?」
という疑問です。
実は、以前から患者背景によっては800mgの方が有利なのではないかと考えられてきました。
その代表が「喫煙」です。
喫煙者では800の方が除菌率が高かった研究がある
過去の日本人を対象とした研究では、PPI+アモキシシリン+クラリスロマイシンによる一次除菌において、喫煙者ではCAM 800mg/日の方が良好な除菌成績を示したという報告があります。
喫煙者では、
と、800mg群の方が高い除菌率でした。
このため以前から、
「喫煙者では800mgを考慮してもよいのでは?」
という考え方があります。
ただし、ここには注意が必要です。
この研究は現在のボノサップのようなボノプラザンではなく、PPIを使用した除菌療法のデータです。

つまりPPIの実験データでタケキャブではなかったん?



そういうことだね。タケキャブ(ボノプラザン)に変わってから少し考え方が変わってきたんだ
ボノプラザンになって状況が変わった可能性がある
ボノサップにはPPIではなく、P-CABであるボノプラザンが使用されています。
ボノプラザンは胃酸を強力に抑制します。
クラリスロマイシンは酸性環境では抗菌力が低下するため、胃内pHを十分に上げることは除菌成功率を高めるうえで重要です。
その効果もあって、ボノプラザンを用いた一次除菌では高い除菌率が得られています。
最新ガイドラインのメタ解析では、
と、ボノプラザン群の方が良好でした。
つまり、PPI時代に問題となっていた患者背景の一部を、強力な酸分泌抑制がカバーしている可能性があります。
では「喫煙者なら800」にするべき?
確かに、
「喫煙者では800mgの方が良かった」
というデータはあります。
しかし現在のガイドラインでは、喫煙者だけを例外として800mgを推奨しているわけではありません。
むしろ8つのRCTをまとめると、
800mgにしても除菌率は上がらず、副作用だけが増える
という結果から、CAM 400mg/日が推奨されています。
ちなみに、まさにこの疑問を検証するため、
「ボノプラザン+CAM 400mg vs 800mg」
を直接比較する日本の無作為化試験も登録されています。
この試験では、除菌率だけでなく、喫煙・CAM耐性・副作用まで評価項目に設定されています。
ただし、UMIN上では現時点で結果は掲載されていません。
そのため現在のエビデンスからは、
喫煙者だから一律に800mgを選択する、とは言い切れない
というのが妥当でしょう。
実は400か800より重要なのが「CAM耐性」
そして除菌率を考えるうえで、CAMの量より重要なのが、
そのピロリ菌がクラリスロマイシンに耐性を持っているかどうか
です。
最新ガイドラインでは、ボノプラザンを使った一次除菌でも、
と、耐性菌では除菌率が低下したデータが紹介されています。
さらにCAM耐性を確認し、CAMをメトロニダゾールに変更した治療では98.0%という除菌率が報告されています。
そのため現在は、
「CAMを400から800に増やす」ことよりも、
「そもそもCAMが効く菌なのかを確認する」
という考え方がより重要になっています。
最新ガイドラインでも、一次除菌前の抗菌薬感受性検査に基づく治療選択が推奨されています。
結局、ボノサップ400と800はどう使い分ける?
現在のエビデンスをまとめると、次のようになります。
です。
800mgに増量しても全体として除菌率の明確な改善は認められず、一方で副作用は約1.35倍多くなるためです。
一方で、
喫煙者では800mgの方が除菌率が高かった過去の研究
もあります。
そのため800mgという選択肢自体に意味がないわけではありません。
ただし、そのデータは主にPPI時代のものであり、ボノプラザンを使用する現在の治療で「喫煙者=800mg」とする十分な根拠はまだありません。
そして何より、
CAM耐性がある場合、単純にCAMを倍量にすることが根本的な解決策になるわけではありません。
まとめ
ボノサップ400と800の違いは、クラリスロマイシンの量です。
「800の方が多いから効きそう」と思ってしまいますが、現在の研究では、
一方で、
という結果になっています。
そのため、最新の日本のガイドラインではCAM 400mg/日が推奨されています。
喫煙者については800mgが有利だった過去の研究もありますが、それだけを理由に一律に800を選択する根拠は十分ではありません。
ボノサップの処方を見たときには、
「400か800か」だけではなく、喫煙歴や過去の抗菌薬使用歴、CAM耐性なども含めて考える
ことが大切です。
参考文献
- Isomoto H, Shimoyama T, Ito M, et al. Guidelines for the management of Helicobacter pylori infection in Japan: 2024 revised edition. J Gastroenterol. 2026;61:841-862.
- ボノサップパック400・800 添付文書(2026年7月改訂)
- UMIN000045798. A randomized trial of clarithromycin 800 mg versus 400 mg as part of first-line triple therapy with vonoprazan for Helicobacter pylori gastritis.











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