高血圧症の食事療法〜「減塩しましょう」の一歩先へ〜

高血圧症の患者さんは、内科の門前薬局でしたら処方する機会は本当に多いのではないでしょうか。

それゆえに
「血圧が高いのですが、しょっぱいもの食べてないのだけどねぇ」
などと、食事の話に自ずとなることも多いかと思います。

「塩分を控えてください」
「野菜を多めに食べてください」
「お酒は控えめにお願いします」

この辺りは、薬剤師さんが投薬場面で患者さんに伝えたことがあるかもしれません。

一方で
「どのくらい減らせばいいの?」
「味噌汁はダメなんでしょ?」
「減塩しょうゆ使ってるから大丈夫よね?」
「カリウムが必要って聞いたから、バナナ食べてるわよ」

など、具体的な質問をされてしまうと、どこまでどう答えて良いのか、迷ってしまった!
という経験がある方も、いらっしゃいませんか?

この記事では、高血圧症の基本をおさらいしながら、
薬局で患者さんに伝えやすい食事療法のポイントを整理します。

目次

高血圧症とは?

高血圧症とは、血圧が高い状態が続くことで、血管や臓器に負担がかかる状態となっている疾患です。
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のこと。
血圧が高い状態が長く続くと、血管に負担がかかり、動脈硬化を進行させます。
その結果、脳卒中・心筋梗塞などの心血管疾患や、腎障害などのリスクに繋がります。

高血圧は自覚症状がないことも多いのですが、「自覚症状がないから大丈夫」とは限りません。
そのため、血圧を適切に管理し、将来的な循環器疾患や臓器障害のリスクを抑えることが重要です。

2025年に改定された日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、従来の「高血圧の治療」だけではなく、予防や生活習慣の改善を含めた包括的な血圧管理が重視されています。

高血圧の原因は「塩分」とは限らない

「血圧が高い=塩分の摂りすぎ」と考えている患者さんも少なくありません。
しかし、高血圧の要因は塩分だけではありません。

・遺伝的要因
・加齢
・肥満
・運動不足
・飲酒
・喫煙
・食生活

など、さまざまな要因が関係しています。
また、食塩に対する血圧の反応には個人差があります。
そのため、
「血圧が高いですが、塩分摂りすぎていませんか?」
と単純化せず、
複数の要因を視野に入れた上で、投薬時に情報提供できると良いでしょう。

高血圧症の食事療法のポイント

食塩制限以外に着目すべきポイントはなんでしょう?
高血圧症の食事療法のポイント5つをお伝えします。

①食塩を減らす

せっかく、患者さんが「食塩を減らした方が良いのよね」という気持ちになっていますので、
これは減塩のチャンスです。

ですが、食塩に対する血圧の反応には個人差があります。

それでも、なぜ「まずは減塩」なのでしょうか。

令和5年国民健康・栄養調査では、20歳以上の食塩摂取量の平均値は9.8g/日(男性10.7g、女性9.1g)でした。

それに対し、ガイドラインでは高血圧の患者さんの食塩摂取量は
1日6g未満
を目標としています。

ここに、大きな差があります。
つまり、「少し薄味にする」だけでは6g未満にすることは難しいケースが多いでしょう。

食塩の過剰摂取が健康に及ぼす影響は高血圧だけではありません。
ですので、食塩感受性の高低に関わらず減塩は健康課題として重要になります。

せっかく減塩への取り組みに前向きになっているチャンスを逃さない手はありません。

さて、具体的な減塩方法です。

薬剤師さんが行う、投薬指導の中で1日6g未満になるように計算してアドバイスする必要はありません。
そこは栄養指導で私たち管理栄養士が頑張ります。
ですので、合言葉は「今よりも減らす」です。

・毎日、朝晩味噌汁を飲んでいるなら、朝だけにする。
・ドレッシングをかける量を今より減らす
・お漬物を毎日食べているなら、2日に1回にする

こういった提案をするために、
「汁物は1日何回飲みますか?」
「お漬物は好きですか?」
「ドレッシングは何を使っていますか?」

などの質問をし、その後に「どれくらい使うか」という量を確認して提案できればOKです。

②:野菜・果物を取り入れる

塩分(ナトリウム)を減らす一方で、増やしたい栄養素がカリウムです。
カリウムには、ナトリウムの排泄を促すなど、血圧の調整に関わる働きがあります。
野菜や果物にはカリウムが多く含まれています。

ただし、
「高血圧だから、たくさんカリウムを摂ればいい」
というわけではありません。

腎機能が低下している患者さんなどでは、カリウム摂取について個別の配慮が必要なケースがあります。

ですので、降圧剤以外にも腎疾患に関連する服薬履歴がある場合は、自己判断でカリウム摂取を促さないことが重要です。

③:「DASH食」という考え方

DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食とは、
高血圧の予防・改善を目的として、アメリカで開発された食事療法です。

主に、

・カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質を増やす
・ナトリウム、飽和脂肪酸、コレステロール、糖分を減らす

という特徴があります。

<取り入れたい食材>
・野菜、果物類
・全粒穀物
・豆類、豆製品
・ナッツ類
・魚
・低脂肪の乳製品

<摂りすぎないよう注意する食材>
・食塩
・飽和脂肪酸
・加工食品、砂糖入りの飲料

「DASH食を意識してください」
と言われても患者さんはピンと来ません。
ですので、DASH食という食事療法があるということを念頭においた上で、

「今の食事に野菜を1品増やしてみましょう。」
「お菓子の代わりに、低脂肪ヨーグルトに置き換える方法もあります」

など、現在の食生活の一部を置き換える方法を提案していくことが現実的です。

大切なことは
「DASH食という特別な食事をする」と考えるのではなく、
「徐々に、食事の方向性をDASH食に移行していく」といったスタンスで少しずつ提案します。

④適正体重を維持する

肥満がある場合は、減量も血圧管理につながります。
もし肥満があり、細かい食事管理をするよりも、
「体重を減らす」という数値化しやすい目標を立てる方がわかりやすい、という患者さんでしたら、
減量の数値目標を示してあげることも一つです。

目安としては、BMI25未満を維持することを目指します。
実際の患者さんに合った数字で提示できると、より具体的な目標になって良いですね。

⑤飲酒量

飲酒も血圧に関係する生活習慣の一つです。

お酒を飲んでいる、ということは投薬時には言いにくい患者さんもいらっしゃるかと思いますが、会話の中で飲酒習慣に気づいた際は、ぜひ一言アドバイスしましょう。

ただ、患者さんは「禁酒を勧められる」と思っている方も多くいます。
もちろん、やめられるのならばそれに越したことはありませんが、

・今よりも1回あたりの量を減らす
・今よりも頻度を減らす
・休肝日を設ける
・ノンアルコール飲料に置き換える(まずは、毎日じゃなくても)

このような提案をしてみましょう。

また、飲酒習慣があると、
・おつまみをとる→塩分が増えやすい
・食事量が増える、夜遅くに食べる→肥満を助長する可能性がある

といった血圧上昇への悪影響を及ぼしがちです。
飲酒そのものだけでなく、飲酒に伴う食習慣にも着目し、飲酒時の注意ポイントとして、

・おつまみは、低脂質・塩分控えめなものを選ぶ
・食事時間を区切る
・飲酒は⚪︎時までと決める
などのアドバイスをするのも、一つです。

いざ、患者さんに聞いてみましょう

「お味噌汁や麺類の汁はどうされていますか?」

いきなり減塩の提案をするのではなく、今の食生活のどこに減塩の余地があるか、患者さんと一緒に探していきましょう。

汁物から塩分を摂り過ぎている方は意外と多いので、まずはこの質問をきっかけにするのもお勧めです。

「しょうゆやソースはかけますか?つけますか?」

一般に、調味料は料理に直接かけるよりも、小皿に出してつけて食べる方が使用量を抑えやすいとされています。
ですので、刺身やフライを食べるときは、直接かけずに、小皿に調味料をあらかじめ出す習慣をつけることを助言するのも一つです。

「ハムやウインナー、練り物はよく食べますか?」

畜肉加工品(ハム・ウインナー・ベーコンなど)や練り物(ちくわ・はんぺん・かまぼこなど)は商品によって差はありますが、塩分を多く含む傾向があります。
摂取頻度が多い場合には、使用頻度・量を見直したり、
減塩タイプの商品に置き換えることを提案します。

「外食は多いですか?」

外食が多いと塩分量が多くなってしまう傾向がある一方で、
メニューに塩分量の表示があるため、塩分計算がしやすいというメリットもあります。

外食では栄養成分表示を確認する習慣をつけ、塩分相当量が比較的少ないメニューを選ぶようにしましょう。

「普段、歩いてますか?」

地域によって、ライフスタイルによっては、ほとんど歩かない方も多いのではないでしょうか。
高血圧の生活習慣改善では、ウォーキングなどの有酸素運動も重要です。
無理なく継続できる運動を取り入れることをお勧めしてみましょう。

目安として、軽〜中等度の有酸素運動を毎日30分以上、無理のない範囲で毎日の生活に組み込みましょう。
ただし、血圧が非常に高いときや、運動について医師から制限を受けている場合は、自己判断で運動を始めず、かかりつけ医に相談してください。

患者さんからのQ&A

Q1:味噌汁は発酵食品だから、体に良いですよね?

A1:過ぎたるは及ばざるが如し、です。

確かに、味噌そのものには様々な栄養素が含まれています。
発酵食品としても注目されておりますが、そもそも塩分を多く含む調味料の一つですので、
具を増やし、汁を少なめにするなど「禁止」せずに工夫しましょう。

Q2:バナナを食べればいいですか?

A2:特定の食品をたくさん食べることはお勧めできません。

確かにバナナはカリウムを多く含んでいます。
しかし、特定の食品だけに偏ることなく、野菜や他の果物など、普段の食事全体を見ていくことが大切です。

患者さんがカリウム摂取に意識が向いている時は
「腎臓の病気などはありませんか?」
と合わせて確認しましょう。

Yuki

食べすぎは糖も心配ですし、心臓だと高カリウム血症とかも不安ですしね…

Sato

そう!だからこそ食事全体で見ていくことが大切なんです!

Q3:高血圧なので、塩を全く食べない方がいいですか?

A3:いいえ。目標は「食塩をゼロにする」ことではありません。

ナトリウムは、体内の水分バランスや神経・筋肉の働きなどに関わる、身体に必要なミネラルです。

高血圧では食塩の摂り過ぎを避けることが重要ですが、だからと言って「塩は身体に悪い、できるだけゼロにしなければならない」と考える必要はありません。

「減塩しましょう」
という聞き慣れたフレーズを、患者さんがどう捉えているのか。
「今よりも減らす」なのか、「塩は悪!」なのか。
会話の中できちんとどう捉えているかを掴めるといいですね。

Q4:減塩しょうゆなら、いくらでも使って大丈夫ですか?

A4:いいえ。減塩タイプの調味料も使い過ぎには注意しましょう。

「減塩タイプを使っている」
というだけで、安心していつもより多く使ってしまっては、摂取している塩分量は増えてしまう可能性もあります。

減塩タイプを使うことと、使用量を控えること、どちらも一緒に意識しましょう。

まとめ

高血圧の食事療法=減塩というイメージはあります。
実際、減塩は大切になりますが、生活習慣の改善5項目は

①減塩
②カリウムの積極摂取
③DASH食
④体重管理
⑤節酒

これらに有酸素運動を加える、という方針で生活習慣の改善を促せるよう、
「患者さんの生活の中で、どこなら工夫できそうか」
を投薬での会話に繋げていけると、より満足度の高い投薬指導となるのではないでしょうか。

参考資料

  • 日本高血圧学会 『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
  • 厚生労働省 『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
  • 厚生労働省 『令和5年国民健康・栄養調査結果の概要』
  • 日本高血圧学会 『血圧を下げるための減塩と増カリウムの正しい知識』https://www.jpnsh.jp/general_learn/index.html
  • 厚生労働省 『e-ヘルスネット「カリウム」』

※本記事は上記資料を参考に、管理栄養士としての栄養学的知見および臨床経験をもとに執筆しています。

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この記事を書いた人

栄養士・管理栄養士として、内科・外科・産婦人科のある病院、児童養護施設、調剤薬局など、幅広い現場で勤務。フリーランスとして特定保健指導にも携わっています。

乳児から高齢者まで、さまざまな年代の方を対象に、食事や栄養に関する支援を20年行ってきました。(2026年)

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