エンレストは一包化できる?梅雨から夏は「吸湿」に要注意

エンレストは一包化できる?梅雨から夏は「吸湿」に要注意

エンレスト錠は、服用間違いや飲み忘れを防ぐために一包化して調剤されることがあります。しかし梅雨から夏にかけての高温多湿な時期は要注意です。

製造販売元のノバルティス ファーマからも、一包化後のエンレスト錠に「ひび割れ」や「膨張」が報告されているとして、注意喚起が出されています。

目次

結論:一包化は禁止ではないが、メーカーは推奨していない

エンレスト錠の一包化は、添付文書上「禁止」されているわけではありません。服薬管理上の必要性から、薬剤師の判断で一包化されることはあります。

一方、ノバルティス ファーマは2025年4月の案内で、次の点を示しています。

  • 梅雨から夏の多湿な時期に、一包化後の錠剤で「ひび割れ」や「膨張」が報告されている
  • 25℃・相対湿度60%を超える高温・高湿度での安定性は確認されていない
  • メーカーとしては一包化を推奨していない

つまり「問題なく一包化できる薬」ではありません。一包化による服薬管理上のメリットと、吸湿による品質変化のリスクを、患者さんごとに検討する必要があります。

ひより

バ…バラ錠販売してるやん…。どういうこと…。

Yuki

使いやすい薬ではあるからね…。
ちなみに一包化の注意する薬である代表格の
アスパラカリウム錠もバラ錠はあるんだよ

ひより

知らんかった。

エンレストは湿度60%を超えると吸湿しやすい

有効成分のサクビトリルバルサルタンナトリウム水和物は、インタビューフォーム上、相対湿度が60%を超えると非常に吸湿性が高くなるとされています。

一包化すると、錠剤はPTPシートから取り出され、分包紙の中で保管されます。分包紙はPTP包装と同じ防湿性能を持たないため、周囲の湿度が高い状態が続くと、錠剤が水分を吸収しやすくなります。

特に次のような環境は注意が必要です。

  • 梅雨から夏の湿度が高い室内
  • キッチンや洗面所などの水回り
  • 湿度の高い部屋に置いたお薬カレンダー
  • 高温になる車内
  • 一包化した薬を袋から出したまま保管する場合

「3か月安定」というデータをどう考える?

エンレスト錠100mgについては、無包装の状態で25℃・相対湿度60%の環境に3か月間保存しても、
性状・溶出性・類縁物質・含量が規格内だったというデータがあります。

条件を整理すると次の通りです。

確認項目内容
対象エンレスト錠100mg
包装無包装
温度25℃
相対湿度60%
保存期間3か月
結果規格内
未確認これを超える高温・高湿度条件

注意したいのは、この試験が示すのはあくまで表の条件下での結果にすぎない点です。

日本の梅雨や夏の室内では相対湿度が60%を超えることがあり、その範囲は未確認のまま残ります。
また、無包装3か月のデータが示されているのは100mg錠であり、50mg錠・200mg錠は同条件で確認されていません。

したがって「夏場でも一包化して3か月問題ない」と読み替えることはできません。

なお、50mg・100mg・200mg錠はいずれも、PTPまたはポリエチレン瓶に包装された状態なら40℃・75%RHで6か月間規格内という加速試験結果があります。ただしこれはメーカー包装のままでの試験であり、一包化した状態の根拠にはできません。

ひより

吸湿するとどんなふうになるん?

Yuki

ひび割れだったり、ちょっと崩壊したり、
人によっては柔らかくなると聞くね

一包化が必要な場合の対策

服用間違いが多い患者さんでは、PTPのまま渡すことでかえって服薬状況が悪化することもあります。一包化が必要と判断した場合は、次の対策を検討します。

乾燥剤と一緒に密閉して保管する
一包化した薬を、乾燥剤とともにチャック付きの防湿袋や密閉容器へ入れます。
「薬袋に入れておくだけ」ではなく、使用後は毎回しっかり密閉するよう説明することが重要です。

お薬カレンダーに長期間出したままにしない
数週間分をまとめてカレンダーに入れると、その間は湿気にさらされ続けます。
残りは乾燥剤入りの密閉容器に保管し、カレンダーへ出すのは数日分にとどめる方法も考えられます。

長期処方では一包化の必要性を再検討する
56日分・84日分などの長期処方では、後半に服用する薬ほど長く湿気の影響を受けます。
自己管理できる患者さんはエンレストだけPTPのままにする、一包化する日数を短くするなど、状況に応じて対応します。

冷蔵庫へ入れればよいとは限らない
自己判断で冷蔵庫へ入れるのはおすすめできません。
取り出した際の温度差で結露し、かえって湿気を吸う可能性があります。特別な指示がない限り、直射日光・高温・多湿を避けた室内で保管します。

錠剤にひび割れや膨張があったら?

一包化されたエンレスト錠が、以前より大きくなっている、ひびが入っている、形や色が変わっている場合は患者さんに持ってきてもらうようにしましょう。

外観変化が生じた条件での含量や溶出性は十分に確認されていないため、「見た目だけの問題だから服用してよい」とは一律に判断できません。薬局側も、錠剤の状態・調剤日・保管期間・保管場所などを確認したうえで、必要に応じてメーカーへ問い合わせます。

まとめ

エンレスト錠は一包化が明確に禁止された薬ではありません。

しかしバラ錠の販売はしているものの、メーカーは一包化を推奨しておらず、梅雨から夏には吸湿によるひび割れや膨張が報告されています。

一包化するかどうかは「できる・できない」だけで決めるのではなく、服薬管理上の必要性と、季節・処方日数・自宅での保管環境を含めて判断する必要があります。そのうえで一包化する場合は、次の対応を検討してください。

  • 乾燥剤とともに防湿袋や密閉容器に入れ、使用後は毎回密閉するよう指導する
  • お薬カレンダーに出すのは数日分にとどめ、残りは密閉保管する
  • 長期処方では一包化する日数を短くする、自己管理できる患者さんはエンレストだけPTPのままにするなど、処方日数に応じて調整する
  • 錠剤にひび割れ・膨張・変色があれば服用せず薬局へ相談するよう伝える

参考資料

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この記事を書いた人

Yukiのアバター Yuki 管理薬剤師

調剤薬局で15年、管理薬剤師として13年勤務。
現在は学校薬剤師として小学校・中学校にも関わりながら、薬剤師向けサイト「PharmaNote」を運営しています。

薬剤師としての現場経験と、テレビ・アニメ作編曲家としての表現の経験を活かし、やさしく親しみやすい情報発信を心がけています。

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