甲状腺機能低下症がスタチンの筋障害と関係!? LDL高値とCK上昇が重なったら確認したいこと

「スタチンを飲み始めてから筋肉が痛い」
「薬を変更してもCKが上がってしまう」

このような場合、スタチンの種類や用量、併用薬の確認が必要です。

もう一つ、見落としたくないのが甲状腺機能低下症です。

甲状腺機能低下症は、LDLコレステロールを上昇させるだけでなく、筋痛やCK上昇の原因にもなります。
さらに、スタチンによる筋障害・横紋筋融解症のリスク因子としても知られています。

今回は、この関係と、調剤薬局で確認したいポイントを整理します。

目次

甲状腺機能低下症は、筋肉にも影響する

甲状腺ホルモンは、全身の代謝や筋肉の正常な働きを支えています。

不足すると、

・疲れやすさ
・寒気
・便秘
・筋痛
・こわばり
・筋力低下

が現れることがあります。

筋肉への影響は、血液検査でCKの上昇として見つかる場合もあります。

CKは筋細胞などに含まれる酵素で、筋肉が傷つくと血中に増えます。

甲状腺機能低下症による筋障害の詳しい仕組みには未解明の部分もありますが、
筋肉のエネルギー代謝の変化などが関係すると考えられています。
まれに、スタチンを使用していなくても横紋筋融解症に至ることもあります。

スタチンによる横紋筋融解症のリスクにもなる

甲状腺機能低下症、特に未治療または治療が不十分な状態は、スタチン関連筋症状のリスク因子に挙げられています。

筋肉に影響する背景疾患があるところに、スタチンによる負担が重なる可能性があるためです。

国内の電子添文でも注意喚起されています。

例えば、プラバスタチンNa錠「NS」では、甲状腺機能低下症の患者について、次の記載があります。

横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある。

水溶性スタチンであっても、甲状腺機能低下症がある場合の注意は必要です。

なお、甲状腺機能低下症があるから、必ず横紋筋融解症になるわけではありません。筋障害のリスクを評価する際に確認すべき背景の一つです。

ひより

脂溶性の方が起きやすい傾向にはあるんよね?

Yuki

そうだね、でも水溶性のスタチン系でも出ることはあるから固定概念は捨てようね

LDLコレステロールが高くなる原因にもなる

甲状腺機能低下症は、続発性(二次性)脂質異常症の原因です。

甲状腺ホルモンが不足すると、肝臓でのLDLの処理が低下し、血中のLDLコレステロールが上昇することがあります。
甲状腺ホルモンを補充して機能が改善すると、LDLも下がる場合があります。

そのため、次のような経過には注意したいところです。

  • 以前は正常だったLDLが、最近になって大きく上昇した
  • スタチンを使用しても、期待したほどLDLが下がらない
  • LDL高値と筋痛・CK上昇が重なっている

日本動脈硬化学会の「脂質異常症診療のQ&A」でも、スタチンの効果が不十分でCKが上昇する場合は、スタチン不耐とともに甲状腺機能低下症の合併を確認することが重要とされています。

薬局では、どのようなことを確認する?

筋症状がある場合、薬を飲み始めた時期だけでなく、増量や併用薬の追加、最近の運動なども確認します。
そのうえで、甲状腺機能低下症を疑う手がかりがないかを見ていきます。

確認すること問診の例
筋症状の経過「痛みはいつからですか?薬が変わる前からありましたか?」
筋力低下「階段や立ち上がる動作が、以前よりつらくありませんか?」
甲状腺疾患の既往「橋本病など、甲状腺の病気を指摘されたことはありますか?」
全身の変化「最近、寒がりになったり、便秘やむくみが増えたりしていませんか?」
治療の継続状況「甲状腺のお薬は、これまでどおり飲めていますか?」

甲状腺機能低下症では、疲れやすさ、体重増加、眠気なども現れます。

気になる経過があれば、筋症状や脂質値の変化、既往歴などをまとめ、処方医へ情報提供することが役立ちます。

検査ではTSHとFT4を確認する

甲状腺機能の評価には、主にTSHとFT4を用います。

検査項目何を見ている?
TSH下垂体から分泌され、甲状腺にホルモン産生を促すホルモン
FT4血液中の遊離サイロキシン

典型的な原発性甲状腺機能低下症では、

FT4低値
TSH高値

潜在性甲状腺機能低下症では、

FT4:基準範囲内
TSH:高値

ただし、中枢性甲状腺機能低下症ではTSHが高くならない場合もあるため、検査値は組み合わせて評価します。

スタチン服用中の筋症状や原因不明のCK上昇を評価する際には、CK・腎機能・併用薬などに加え、甲状腺機能も確認項目になります。

甲状腺機能低下症が見つかったら、脂質治療も再評価する

甲状腺機能低下症がある場合は、その治療を行い、改善後の脂質値を改めて評価することが大切です。

LDL上昇の一部が甲状腺機能低下によるものであれば、機能の正常化によって、必要な脂質低下療法が変わる可能性があります。

日本動脈硬化学会のQ&Aでも、甲状腺機能を正常化させた後に脂質値を再評価する考え方が示されています。

ただし、甲状腺機能低下症を理由に、すべての患者さんでスタチンを中止するわけではないことに注意しましょう。

強い筋痛、著しい脱力、褐色尿、尿量の減少などがある場合は、横紋筋融解症を疑い、速やかな医療機関への連絡・受診につなげます。甲状腺の検査結果を待って対応を遅らせないことが重要です。

まとめ

甲状腺機能低下症とLDL・筋肉の関係

甲状腺機能低下症は、LDLコレステロール上昇と筋障害の両方に関係します。さらに、スタチンによる横紋筋融解症のリスク因子でもあります。

スタチン服用中に筋痛やCK上昇が見られたときは、薬剤や併用薬の確認に加え、背景に甲状腺機能低下症がないかも考えてみましょう。

特に「LDLが最近上がった」「薬の効果が乏しい」「CKも上がる」という経過は、処方医へ情報提供する大切な手がかりになります。

参考資料

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この記事を書いた人

Yukiのアバター Yuki 管理薬剤師

調剤薬局で15年、管理薬剤師として13年勤務。
現在は学校薬剤師として小学校・中学校にも関わりながら、薬剤師向けサイト「PharmaNote」を運営しています。

薬剤師としての現場経験と、テレビ・アニメ作編曲家としての表現の経験を活かし、やさしく親しみやすい情報発信を心がけています。

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