腎臓病の食事療法 〜タンパク質は減らせばよい?〜 

「腎臓の数値が悪いと言われたので、タンパク質を減らしています」 
「腎臓病にはタンパク質が良くないと聞いたので、肉や魚を控えています」
 

このような話を患者さんから聞いたことはありませんか? 

慢性腎臓病(CKD)の食事療法では、病状によってタンパク質の摂取量を調整することがあります。 

しかし、腎臓病の患者さんが全員、タンパク質を厳しく制限すれば良いわけではありません。 

自己判断による過度な制限は、エネルギーやタンパク質の不足を招き、低栄養につながる恐れがあります。 

今回は、腎臓病におけるタンパク質制限の基本と、調剤薬局での投薬指導時に活用できる声かけについて解説します。 

目次

「タンパク質を減らす」は必須? 

タンパク質は筋肉や臓器、皮膚など、体を構成する重要な栄養素です。 
免疫機能の維持などにも関わっており、健康な生活を送るために欠かせません。 

一方、タンパク質が体内で代謝される過程では、尿素窒素などの老廃物が生じます。 
腎機能が低下すると、こうした物質を十分に排泄できなくなる場合があります。 

そのため、CKDでは病状に応じてタンパク質の摂取量を調整し、腎機能の悪化や尿毒症に関連する問題を抑えることを目指す場合があります。 

ただし、タンパク質を減らしすぎると、筋肉量の減少や低栄養につながる可能性があります。 

特に高齢者や食欲が低下している患者さんでは注意が必要です。 

患者さんが「腎臓のために」と食事を見直していても、実際には必要以上に食事を減らしているかもしれません。 

大切なのは、単に制限を勧めることではなく、

腎機能と栄養状態の両方を考慮し、適切な摂取量を維持すること

です。 

タンパク質制限のポイント 

1.制限量は病状によって異なる 

CKDの食事療法では、

腎機能の程度や原疾患、年齢、体格、栄養状態

などを踏まえて、タンパク質の摂取量を設定します。 
一般的に、保存期CKDでは病期に応じてタンパク質摂取量の調整を検討します。 
一方、透析療法中はタンパク質の喪失なども考慮する必要があり、保存期と同じ考え方では対応できません。 

投薬時の限られた情報だけで、適切な制限量を判断するのは容易ではありません。 
主治医や管理栄養士からの指示内容を確認できるようでしたら、チェックしてみてください。 

2.エネルギー量も確保する 

タンパク質を制限しても、十分なエネルギーを摂取できていなければ、

身体は筋肉などのタンパク質を分解してエネルギー源として利用することがあります。 

その結果、筋肉量の減少や栄養状態の悪化につながるおそれがあります。 

食事療法では、タンパク質の量だけでなく、エネルギーが不足していないかを確認することも重要です。 

「肉や魚を減らした分、ほかの食品はきちんと食べられていますか?」 
「最近、体重が減っていませんか?」 

このような問いかけから、食事量や体重の変化を把握することができます。 

Sato

やはりその人にあった量を設計する必要が重要ですが、
目安として、日本腎臓学会から下記の表がでています。

CKD食事療法の目安

3.タンパク質を多く含む食品を把握する 

タンパク質は、肉、魚、卵、牛乳・乳製品、大豆製品などに多く含まれています。 
患者さんが制限を意識するあまり、これらの食品を極端に避けていないか確認しましょう。 
肉や魚などを一律に禁止する必要があるわけではありません。 
摂取量や食品の選び方は、個々の指示に沿って調整します。 

また、主食にもタンパク質は含まれています。 
タンパク質制限の指示がある場合、主食を含めた食事全体で摂取量を調整する必要があります。 

4.自己判断による制限を防ぐ 

患者さんがインターネットや書籍などで得た情報をもとに、独自の食事制限をしている場合があります。 

特に、体重減少、食欲低下、食事量の減少がみられる場合には、低栄養のリスクも考慮しましょう。 

薬剤師が具体的な摂取量を判断するのではなく、患者さんの困りごとを把握し、必要に応じて主治医や管理栄養士につなぐことが大切です。 

いざ、患者さんに聞いてみましょう 

「タンパク質をどのくらいにするように言われていますか?」 

タンパク質を制限している、気をつけている、 
といった話を伺ったら、まずはそれが、主治医の指示によるものなのか、自己判断なのかを把握します。 

自己判断であった場合は、 

・タンパク質は一律で制限するものではないこと 
・次回診察時に主治医に制限が必要かどうか確認すること 

を伝えましょう。 

「最近、体重が減ったり、疲れやすくなっていませんか?」 

体重は家庭でもチェックしやすい指標の一つです。 
摂取エネルギー量が減っていると体重が減りますし、疲れやすく感じる方もいらっしゃいます。 
しかしそれが、タンパク質の制限のせいと思っていない、気づいていないケースもあります。 

もちろん、タンパク質の制限が原因ではないこともありますが、 
こういった質問を投げかけられることで、食事量や栄養状態の変化に気づくきっかけにもなります。 

「今、どんなものを控えていらっしゃいますか?」 

漠然と「タンパク質を制限した方が良い」と理解し、何を食べて良いかわからないという患者さんも多くいらっしゃいます。 
そうすると、食事そのものが苦痛になりかねません。 

患者さんが不安に感じていることや実際の食事内容を聞き取り、必要に応じて主治医・管理栄養士へつなげましょう。 

患者さんからのQ&A 

Q1|腎臓病といわれたら、肉や魚は食べない方がよいですか? 

A1:必ずしもそうではありません。 

肉や魚はタンパク質の供給源であり、身体に必要な栄養素を含んでいます。 
病状に応じて摂取量を調整するため、一律に禁止する必要はありません。 
主治医や管理栄養士からの指示を確認しましょう。 

Q2|プロテインや高タンパク質食品は避けた方がよいですか? 

A2:自己判断での追加摂取は避けましょう。 

タンパク質の必要量は病状によって異なり、サプリメントや栄養補助食品も含めて摂取量を考える必要があります。 

Q3|タンパク質を減らせば、腎機能は改善しますか? 

A3:制限によって必ず腎機能が改善するわけではありません。 

タンパク質摂取量の調整は、病状によって腎臓病の進行を抑えるための食事療法の一つとなります。 
過度な制限は低栄養につながる可能性があるため、適切な摂取量を守ることが大切です。 

まとめ 

腎臓病の患者さんに対するタンパク質制限では、次の3点を押さえましょう。 

  • タンパク質の適切な摂取量は、病期や栄養状態などによって異なる。 
  • タンパク質の制限だけでなく、十分なエネルギー摂取と低栄養の予防も重要である。
  • 自己判断による過度な制限を防ぎ、必要に応じて主治医や管理栄養士と連携する。 

具体的な制限量を判断し、食事全体を指導するには、患者さんの病状や栄養状態など、多くの情報が必要です。 
投薬という限られた時間の中で、薬剤師さんがすべてを把握するのは容易ではありません。 

だからと言って、声かけが無意味なわけではありません。 

薬局での短い会話が、患者さんの食事や体重の変化に気づくきっかけになることがあります。 
その気づきが、主治医や管理栄養士への橋渡しとなり、他職種協働の力を発揮できる場面となります。 

タンパク質制限の話は難しい、と気負わずに、まずは患者さんの食事について一つ質問してみることから始めてみませんか。 

参考資料 

  • 日本腎臓学会『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』東京医学社 
  • 日本腎臓学会『CKD診療ガイド2024』. 
  • 厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』 
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

栄養士・管理栄養士として、内科・外科・産婦人科のある病院、児童養護施設、調剤薬局など、幅広い現場で勤務。フリーランスとして特定保健指導にも携わっています。

乳児から高齢者まで、さまざまな年代の方を対象に、食事や栄養に関する支援を20年行ってきました。(2026年)

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次