2026年10月21日、厚生労働省は血管炎治療薬「タブネオスカプセル10mg」(一般名:アバコパン)について、
新規患者への投与開始を差し控えるよう通知しました。投与中の患者についても、中止または代替治療への切替えを原則として検討するよう求めています。
背景には、承認の根拠となった臨床試験データの信頼性の問題と、重篤な肝機能障害の報告があります。
国内では、服用後に重篤な肝機能障害を発症し、
死亡した症例が23例
報告されています。
今回は、2026年1月からの動きと、問題となった試験データ、薬局で押さえておきたい対応を整理します。
※2026年10月22日時点の情報です。
タブネオスはどのような薬?
タブネオスは、顕微鏡的多発血管炎(MPA)と多発血管炎性肉芽腫症(GPA)に使用される、選択的C5a受容体拮抗薬です。
補体の一種であるC5aの受容体を遮断し、好中球の活性化などを抑える作用があります。日本では2021年9月に承認され、2022年6月に販売が開始されました
ひより結構新しい薬やな…



古い薬で再審査で引っかかる薬は多いけど、新しい薬は珍しいね
2026年1月から、海外でも見直しが進んでいた
今回の通知に至るまでには、海外での試験データの再検討や、安全性に関する注意喚起がありました。
| 時期 | 主な動き |
|---|---|
| 1月16日 | FDAが、試験データの評価過程などを問題視し、米国市場からの自主撤退を要請 |
| 1月28日 | 開発元の親会社アムジェンが、自主撤退する意向はないとFDAに回答 |
| 1月 | EMAが試験データの信頼性に関する再検討を開始 |
| 3月31日 | FDAが死亡例を含む薬物性肝障害について注意喚起。評価対象は76例 |
| 4月27日 | FDAの医薬品評価研究センター(CDER)が、米国での承認取消しを提案 |
| 5月21日 | 日本で重篤な肝機能障害に関するブルーレターを発出。電子添文に「警告」を新設 |
| 6月 | 日本の厚労省がキッセイ薬品に報告命令。欧州のCHMPは承認取消しを勧告 |
| 6月29日 | ADVOCATE試験の論文が医学誌NEJMで撤回 |
| 8月4日 | 欧州委員会がEUでの承認取消しを決定 |
| 9月1日 | 英国が新規患者への使用・供給・販売を停止。既存患者の移行期間を設け、2027年3月1日に承認を取り消す意向を公表 |
| 10月21日 | 日本で新規投与の差し控えと、投与中患者の中止・代替治療への切替え検討を通知 |
この経緯は、アムジェン、FDA、EMA、MHRA、厚労省の公表資料と、NEJMの論文撤回通知に基づきます。
米国の「自主撤退要請」「承認取消しの提案」と、
EUでの「承認取消し決定」は、それぞれ段階が異なります。
また、FDAが示した肝障害76例と、日本で報告された死亡23例は、集計期間や対象の異なる数字です。
臨床試験データでは何が問題になった?
承認の主要な根拠となったのは、国際共同第Ⅲ相試験「ADVOCATE試験」です。
問題の中心は、
初回解析の結果と患者の治療割付を知った担当者が、再判定する症例の選定に関わっていた
ことです。
初回解析では、52週時の優越性が示されていなかった
初回解析では、主要評価項目の一つである「52週時の寛解維持達成率」について、
タブネオス群の対照群に対する優越性は示されていませんでした。
その後、結果と治療割付を知っている担当者が、再判定候補として9症例を選定しました。
FDA資料では、再判定によりタブネオス群の5例が
「寛解維持なし」から「寛解維持あり」に変更され、
統計学的に有意な結果になったと説明されています。
再判定までの経緯が、適切に開示されていなかった
再判定を依頼された独立判定委員会には、初回解析で優越性を示せなかったことや、治療割付を知る担当者が候補症例を選んだことなどが説明されていませんでした。
承認申請資料にも、初回解析や症例選定、再判定に至る経緯が適切に記載されていなかったとされています。
PMDAは、ADVOCATE試験の成績を有効性の根拠資料として扱うことは不適当と判断しました。
市販後の情報などを含めても、有効性が検証されたと判断することは困難としています。
臨床試験では、結果を知った後の判断が評価に入り込まないことが大切です。今回は、その信頼性が損なわれたことが問題になっています。



盲検性が保たれていないね…。
国内で死亡報告23例。肝機能障害にも注意が必要
国内ではタブネオスの服用後に重篤な肝機能障害を発症し、死亡した症例が23例報告されています。
このうち6例は、薬との因果関係が否定できないとされています。
5月のブルーレターでは、すでに死亡報告20例が示されており、因果関係が不明な症例を含むことも明記されていました。
胆管消失症候群とは?
特に注意したい副作用の一つが「胆管消失症候群(VBDS)」です。
肝臓の中の小さな胆管が障害されて消失し、胆汁の流れが悪くなる病態です。
が現れ、重篤な経過をたどることがあります。
肝機能の評価では、
にも目を向ける必要があります。
今回の通知で求められている対応
厚労省の通知では、次の対応が求められています。
| 対象 | 対応 |
|---|---|
| 新規患者 | 投与開始を差し控える |
| 投与中の患者 | 中止または代替治療への切替えを原則として検討する |
| 切替えまでの間など、継続する患者 | ブルーレターを踏まえた適正使用を続ける |
治療変更は、病状や治療効果、他の選択肢、変更に伴う影響を踏まえて個別に判断します。
服用中の患者さんには、自己判断で中止せず、主治医と今後の治療を相談するよう伝えることが大切です。
国内の承認取消しは、10月22日時点では決定していません。
報道では、厚労省は承認取消しを含む対応について、年内を目途に判断する方針とされています。
薬局で押さえておきたい確認事項
実務では、処方の継続だけでなく、治療変更の方針と検査状況まで確認しておきたいところです。
- 新規処方では、今回の通知を踏まえた処方か、処方医に確認する。
- 継続処方では、中止・切替えの検討状況と次回受診日を確認する。
- 肝機能検査の実施状況や、黄疸・かゆみ・倦怠感などの有無を確認する。
- 気になる症状がある場合は、次回受診を待たず、速やかに医療機関へ相談するよう案内する。
継続中の肝機能検査の頻度
国内の電子添文では、以下の頻度で肝機能検査を行うこととされています。
| 期間 | 検査頻度 |
|---|---|
| 投与開始前 | 肝機能検査を実施 |
| 開始後3か月間 | 少なくとも2週間に1回 |
| その後の3か月間 | 少なくとも4週間に1回 |
| それ以降 | 投与期間中は定期的に実施 |
中断・中止が必要となる基準
電子添文では、ASTまたはALTが基準値上限の3倍を超えた場合、投与を中断し、速やかに患者の状態を評価するとしています。
また、以下の場合は投与中止とされています。
- ASTまたはALTが基準値上限の8倍を超える。
- ASTまたはALTが基準値上限の5倍を超える状態が、2週間を超えて続く。
- 総ビリルビンが基準値上限の2倍を超える。
- ALPが基準値上限の2倍以上となる。
- 黄疸やかゆみなど、肝機能障害の徴候・症状が現れる。
胆管消失症候群が疑われる場合も、速やかな中止が必要です。これらに該当する所見があれば、速やかに処方医と連携します。
まとめ


タブネオスでは、承認を支えた臨床試験データの信頼性が問題となり、2026年10月21日、日本でも新規投与の差し控えが通知されました。投与中の患者についても、中止または代替治療への切替えを原則として検討する方針です。
国内では、重篤な肝機能障害を発症した死亡症例が23例報告され、このうち6例は薬との因果関係が否定できないとされています。
薬局では、患者さんが自己判断で服用を中止することなく、主治医と治療変更を相談できるよう支えるとともに、肝機能検査や自覚症状の確認を続けていくことが大切です。











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