糖尿病患者さんへの食事指導|薬剤師が服薬指導で確認したい5つのポイント

糖尿病患者さんへの投薬時にこんな質問を受けることはありませんか?

「甘いものは食べたらダメなんですよね」
「ご飯、食べてないんですけど…」
「ジュースの代わりに、OS-1を飲んでます!」

薬剤師さんは薬物療法の専門家ですが、栄養学について学ぶ機会は多くないかと思います。
しかし、糖尿病治療においては薬物療法と栄養療法は車の両輪です。
本記事では、投薬時によくある患者さんからの質問や、「良かれと思って続けている習慣」の改善ポイントについて解説します。

目次

食事療法の目的

糖尿病の食事療法の目的は「目先の血糖値を下げること」だけではありません。

本当に大切なことは、

・良好な血糖コントロールの維持
・合併症の予防
・健康な人と変わらない寿命と生活の質(QOL)を目指す

です。
そのため、「糖質を極端に減らす」ことは最適解ではありません。

血糖値が上がるメカニズム

食事をすると、
糖質がブドウ糖へと分解され、血液中へと運ばれます。
血液を介して運ばれたブドウ糖はインスリンによって細胞へ取り込まれて、各組織でのエネルギー源となります。

血糖値が上がるメカニズム

糖尿病患者さんは

・インスリン分泌不足
・インスリン抵抗性

のいずれか、もしくは両方によって血糖値が高くなっています。

そのため、「何を」「どれくらい」「どのように食べるか」が重要となります。

糖質は悪者、ではない

血中ブドウ糖のもとは糖質でした。
ですので、患者さんは「糖質を食べてはいけない」と思っている方が非常に多いです。
しかしブドウ糖は、脳・赤血球・神経などに必要なエネルギー源であるため、
極端な糖質制限を行うことで

・強い疲労感や集中力低下(脳のエネルギー不足)
・基礎代謝の低下(エネルギー不足を補うために筋肉中のたんぱく質が利用され、筋肉量の低下につながる)
・低血糖のリスク

につながることがあります。
総エネルギー量を無視した極端な糖質制限は長期的な安全性が担保されていないとして、推奨されていません
つまり「適量を、適切に食べること」が重要とされています。

極端な糖質制限をした場合
特にSU薬、インスリン等を使っている患者さんは低血糖に、
SGLT2阻害薬を使用している患者さんは、脱水状態からケトアシドーシスに注意が必要だね。

適切って何? 適量ってどれくらい?

「適量」「適切」という言葉は曖昧に感じるかもしれません。
しかも、「目の前の患者さんにとって、適量を、適切に食べる」なので本当に難しい。

糖尿病にかかる人は太っている、というイメージを持たれている方は少なくありません。
患者さんのすべてに「食べ過ぎ」「肥満」が当てはまるわけではなく、
痩せ型の患者さんや高齢者では、十分なエネルギーやたんぱく質が摂れているか、低栄養やサルコペニアを防ぐ視点も重要です。

患者さんごとの「適量」「適切」は、患者さんとの会話の中にヒントが隠されています。

食事療法、ポイントは5つ

適正エネルギー量

管理栄養士が栄養指導を行う際は、

  • 体格
  • 活動量
  • 年齢

を考慮し、推定エネルギー必要量を算出して指導に当たります。

が、投薬時はそんな暇ありません。

そこで、適正エネルギー量が摂れているかどうか、簡便に確認できる一言があります。

「最近、体重は増えたり減ったりしていますか?」

増えていれば、食べ過ぎの可能性があります。
減っていれば、極端な制限をされている可能性があります。

ただし、体重だけでは正しく評価はできませんので、あくまでも投薬という短い時間の中で、推察するためのツールだと考えてください。

甘い飲み物に注意

患者さんが見落としやすいのが、飲料です。

・清涼飲料水
・スポーツドリンク
・加糖コーヒー
・果汁飲料

これらは、短時間で大量の糖質を、一気に摂取することとなります。

特に夏場は、熱中症予防のためにスポーツドリンクや経口補水液を大量に摂取される方をよくお見かけします。

確かに、熱中症予防のための水分摂取は重要ですが、
日常の水分補給は水やノンカフェインのお茶などで十分です。
スポーツドリンクは、運動時や大量に汗をかいたなぁと思う時、
経口補水液は、軽い脱水症状を感じた時が目安です。

また、健康のためにと野菜ジュースを日常的に飲んでいる方もいます。
そんな患者さんと出会ったら、ぜひ聞いてみてください。

「その野菜ジュース、野菜100%ですか?」

飲みやすい野菜ジュースには果汁が含まれていることがよくあります。
それでは、血糖値が上がりやすくなってしまうので、改善ポイントとなります。

飲み物は食事よりも改善しやすい項目となるため、服薬指導での声かけでは、まず飲み物の確認から始めるのがオススメです。

軽い脱水症状ってどのくらいなん?

下痢・嘔吐・発熱、食事摂取不足、過度の発汗、熱中症など
このあたりを目安にするといいですね

ナトリウムやカリウムも含むから、
糖尿病、腎疾患、高血圧などで食事指導を受けている患者では
特に注意が必要だね!

主食を極端に減らさない

主食であるご飯・パン・麺を減らす、あるいは抜くという方も多く見受けられますが、
その分お菓子を食べてしまえば意味がありません。

主食は適量摂取する必要があるため、ご飯の量よりも、それ以外であるお菓子やジュースからの糖質摂取をまずは確認します。

野菜から食べる、ベジファースト

食事内容だけでなく、食べ方も重要になります。
野菜に含まれる食物繊維は、

・糖の吸収を緩やかにする
・満腹感を得やすく、食べ過ぎを防止する

といった働きが期待できます。

食べる順番だけでは劇的な改善は期待できませんが、無理なく取り入れられる工夫の一つです。

たんぱく質を毎食摂る

筋肉量を維持することは、インスリン抵抗性の改善にも重要です。

・肉
・魚
・卵
・大豆製品

を毎食取り入れることをお勧めします。
ただし、腎機能が落ちている場合は注意が必要です。
その場合はかかりつけ医・担当管理栄養士からの指導のもと摂取量を決定します。

いざ、患者さんへ聞いてみましょう

「朝食は食べていますか?」

朝食を抜かれている患者さんもよくお見かけします。
1日の総摂取エネルギー量を分散することで、血糖値の急な上昇も抑えることができるので、食事を抜かないようにアドバイスします。

実際、朝ご飯を抜いていた人が朝食を摂るようにしたところ、
HbA1cの改善が見られた患者さんに何名か出会いました。

「普段、飲み物は何を飲んでいますか?」

水・お茶以外と答えた場合はぜひ代替案を提示してみてください!

「水かお茶です」
と答えた患者さんには、ちょっと深掘りをしてみます。

①「牛乳や豆乳は飲んでいますか?」

牛乳は脂肪分を含んでいます。目安は1日コップ1〜2杯(約180~200ml)です。
また、豆乳は砂糖や果汁が入った調製豆乳を好まれる方も多く、糖質を多く含んでいるため、血糖値に影響を及ぼします。その場合、無調整豆乳を選ぶことをお勧めします。

②「乳酸菌飲料は飲んでいますか?」

健康のためにと飲まれている方も多く、1本あたりが小さく、あまり気にしていない方が多い印象です。
あの小さな1本にスティックシュガー3〜4本分の糖分が含まれています。
1日に何本も飲み過ぎていないか、カロリーオフタイプの商品がないか、確認をして注意を促せると良いかと思います。

「3度の食事以外に、何か口にしますか?」

これは、質問の仕方にポイントがあります。

「間食」「おやつ」という表現をすると、お菓子類をイメージされる方が多いので、
敢えて「3度の食事以外」という聞き方を、私はします。
すると、

→3度の食事以外に、ジュースを飲む
→3度の食事以外に、夕飯の残りをつまむ

など、隠れたエネルギー摂取が見えてくることがあります。

隠れたエネルギー摂取の場面を発見したら、

・魚肉ソーセージやゆで卵、チーズなど「たんぱく質」を選ぶ
・ナッツ類もおすすめ
・適量を守ってフルーツを間食にする

などのアドバイスをしてみましょう。

患者さんからのよくあるQ&A

Q1:果物は食べていいですか?

食べても構いませんが、適量が重要です。
1日あたり「にぎり拳1個分」(約150g)が目安です。
1食あたりではないですよ、ここは勘違いポイントになる可能性があるので注意が必要です。
具体的には、

・りんご 半分
・みかん 2個
・バナナ 1本

これが1日の適量です。

Q2:糖質ゼロを選べば大丈夫?

確かに、通常の砂糖などが使われた飲料と比べると血糖値の上昇はほとんどみられません。
しかし、食品表示基準では、糖質0.5g未満/100ml(g)の時に「糖質ゼロ」と表記して良いことになっているため、大量に摂取すれば血糖値は上昇しますし、継続的な摂取によって糖質の摂りすぎの一因にもなります。

ですので、「たまに」飲む程度のものとして、日常的な水分補給は水やお茶を推奨します。

Q3:はちみつは体にいいから大丈夫?

いいえ、はちみつも糖質なので血糖値が上昇します。
砂糖と同じように、摂りすぎに注意しましょう。

まとめ

  • 糖質は悪者ではないので、ゼロにすることは重要ではない
  • 適量を適切に、バランスよく食べることが大切
  • 適正体重を維持する
  • 継続できることをやる、継続できることを選ぶ

多くの患者さんは、お薬を受け取るために定期的に薬局へ足を運びます。
私たち栄養士と比べて、薬剤師さんと顔を合わせる頻度は格段に多いです。
その薬剤師さんが、食生活を尋ねてくださるだけでも患者支援につながると私は考えています。

薬剤師さんは、管理栄養士のように詳細な栄養指導を行う必要はありません。
ちょっと一言、「最近食事はどうですか?」という声かけが、生活習慣を見直すきっかけや励みになることがあります。
ぜひ日々の服薬指導の中で、患者さんの食生活に目を向けていただけると嬉しいです。

参考資料

・日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』
・日本糖尿病学会・日本糖尿病協会『糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版』
・厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
・厚生労働省『e-ヘルスネット』
・消費者庁『食品表示基準』


※本記事は上記資料を参考に、管理栄養士としての臨床経験をもとに執筆しています。

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この記事を書いた人

栄養士・管理栄養士として、内科・外科・産婦人科のある病院、児童養護施設、調剤薬局など、幅広い現場で勤務。フリーランスとして特定保健指導にも携わっています。

乳児から高齢者まで、さまざまな年代の方を対象に、食事や栄養に関する支援を20年行ってきました。(2026年)

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