便秘は日常的によくみられる症状の一つであり、特に高齢者では多くみられます。
薬局でも便秘薬を処方する機会が多いのではないでしょうか。
薬物治療については薬剤師さんの専門領域ですが、患者さんから食事の相談を受けたときに、
どこまで説明すれば良いか迷うこともあるのではないでしょうか。
- 便秘には食物繊維
- 水分をたくさん摂る
- ヨーグルトを食べる
こういったイメージは広く知られています。
しかし、便秘の食事療法は、単純に「食物繊維を増やせばよい」というものではありません。
今回は、薬剤師さんが患者さんへの声掛けに活用できるよう、便秘の基本と食事療法のポイントを整理します。
便秘の基本をおさらい
「毎日排便がない=便秘」ではない
便秘というと、「毎日排便がない状態」と考えがちです。
しかし、便秘は排便回数だけで判断するものではありません。
『便通異常症診療ガイドライン2023ー慢性便秘症』より
このような症状を便秘症の症状として捉えています。
つまり、毎日排便があっても、便が硬い・強くいきむ・残便感があるといった症状があれば、便秘症に該当する場合があります。
反対に、2〜3日に1回の排便であっても、便が硬くなく、排便に困難がなければ、必ずしも便秘症とは限りません。
「毎日でていますか?」
と患者さんに聞くだけでは、便秘の状態を十分に把握できない、ということがポイントです。
便秘には様々な原因がある
慢性便秘症には、機能性便秘症などの一次性便秘症のほか、薬剤や基礎疾患などが原因となる二次性便秘症があります。
便秘を訴える患者さんに対して、「食生活だけの問題」と決めつけず、薬剤や基礎疾患なども含めて考えることが大切です。
二次性便秘症の場合は、一般的な便秘対策を行なっても、原因となっている疾患や薬剤による便秘が続く可能性があります。
ただし、食事が無意味になるわけではありません。
便秘の原因を考えた上で、必要な食事支援を行うことが大切な視点となります。

毎日便が出なくても便秘ってわけじゃないんやな。



そう、逆に毎日出てるから便秘じゃない!という訳でもないので注意した方がいいですね
食事療法のポイント
①「食物繊維不足」がないか確認
便秘の食事療法で、まず思い浮かぶのが食物繊維です。
食物繊維は小腸で消化・吸収されず、大腸まで届く成分で、便のかさや性状、腸内環境などに関係します。
食物繊維の摂取量が少ない場合には、食物繊維を増やすことで便秘の改善が期待できます。
一方、すでに十分な量を摂取している人が、さらに食物繊維を増やすことが有効とは限りません。
そのため、患者さんには
「便秘なので、とにかく食物繊維を増やしましょう」
ではなく、
「普段、野菜や豆類・きのこ・海藻・果物などはどのくらい食べていますか?」
と確認するところから始めるとよいでしょう。
日本人の食物繊維摂取量は目標量を下回っており、
成人男性は 20g以上、成人女性は18g以上がそれぞれ1日あたりの目標量とされています。(2025年版 日本人の食事摂取基準より)
ただし、この数値は「便秘症の患者さんが、必ずこの量を摂れば便秘が改善する」という治療目標ではありません。
現在の食事で不足している人は、まず不足分を補う。
これが基本となります。
②食物繊維の種類に着目する


食物繊維には大きく分けて不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があります。
それぞれの食物繊維の特徴を表にまとめてみました。
| 不溶性食物繊維 | 水溶性食物繊維 | |
|---|---|---|
| 特徴 | 水に溶けにくい | 水に溶ける |
| 主な働き | 便のかさを増やす | 水分を保持し、便の性状に影響する。発酵の影響を受けるものもある |
| 食品例 | 野菜、きのこ、豆類、穀類など | 海藻、果物、大麦など |
| 注意点 | 摂りすぎると腹部膨満など | 種類によって作用が異なる |
このように、どんな食物繊維を摂っているかによっても作用が変わってきます。
もし、患者さんから
「便秘だから野菜をたくさん食べています。でもお腹が張るんです」
と言われた場合は、
「もっと食物繊維を摂りましょう」ではなく、
「どんな食物繊維を、どのくらい摂っているか」を考える必要があります。
つまり、「便秘=野菜を山盛り食べる」ではない、ということをぜひ知っていただければ嬉しいです。
③水分は不足していないか
便の硬さには、腸管内の水分も関係します。
そのため、普段から水分摂取量が少ない患者さんでは、適切な水分摂取を心がけることが大切です。
ただし
「便秘だから、とにかく水を2L飲みましょう」
と、一律に勧める必要はありません。
水分摂取量には、食事から摂取する水分も含まれます。
また、心不全や腎疾患などで水分制限が必要な患者さんもいます。
薬剤師さんが声をかける際には
「普段、水分はどれくらい飲んでいますか?」
と確認し、極端に少ない場合には適切な水分摂取を促す、という程度から始めるとよいでしょう。
④「便秘に効く食品」を一つに決めつけない
便秘対策として
「ヨーグルトを食べています」
という患者さんもいるでしょう。
ヨーグルトなどの乳酸菌食品については、慢性便秘症に対する有効性を示した報告があります。
ガイドラインでも、日本人の慢性便秘症に対してヨーグルトなどの乳酸菌食品が有効との報告が紹介されています。
ただし、
「ヨーグルトを食べれば便秘が治る」
といった単純な話ではないため、一つの食品だけを強く勧めることはせず、様々な食品を摂ることも大切であることを念頭に置いておきましょう。
⑤「食べる量」が少なすぎないか
意外と見落としやすいのが、そもそも食事量が少ないケースです。
食事量が少なければ、便の材料となるものも少なくなります。
また、食事由来の水分摂取量も自ずと減ってしまいます。
特に、
・食欲が低下している高齢者
・ダイエット中の人
・朝食を抜く習慣がある人
・食事を極端に制限している人
などは、まずは食事全体を適切に摂ることが大切になります。
なので、
「食事は十分に摂れていますか?」
という質問も有効です。
⑥食事だけでなく「排便習慣」も大切
排便は食事だけで決まるものではありません。
便意を感じた時に我慢する習慣や、排便の時間を確保できない生活も、便秘につながることがあります。
また、身体活動が低いことは慢性便秘症の発症リスクの一つとされています。
・朝食をとる
・便意を我慢しない
・トイレに行く時間を確保する
・無理のない範囲で身体を動かす
こうした排便習慣や生活リズムを整えることも、便秘対策の一つとして考えられます。
いざ、患者さんに聞いてみましょう
便秘の相談をされた時、
便秘薬を処方された時、
投薬時に実際どんな声掛けができるでしょうか。
「最近、お薬が変わっていませんか?」
ここは薬剤師さんの投薬指導ですので、私たち栄養士には及ばぬ範囲です。
その上で必要であったら、食事の話をぜひ導入してみてください。
「便は何日くらい出ないことが多いですか?」
意外と、毎日出ていない=便秘と思われている方は多いです。
まずは本当に便秘で困っているのか否かを示してあげるといいでしょう。
「便は硬いですか?」「お腹の張りはありますか?」
あくまでも一つの目安ではありますが、
という流れで確認を進めてみましょう。
「普段、野菜や豆類・きのこ・海藻・果物などはどのくらい食べていますか?」
ポイントは、具体的な食品をあげて確認することです。
「食物繊維の豊富な食材」
と言われて、イメージできる食品は人によって違うためです。
十分摂れているようであれば
「さらに増やせばよいとは限らない」
ということを説明して、他の原因を一緒に考えてみましょう。
患者さんからのQ&A
Q1:「便秘にはキウイ」って効くけど、本当?


A1:はい。キウイは一定のエビデンスがある食材です。
単なる民間療法ではなく、ガイドラインでもキウイについて慢性便秘症での研究が整理されており、便通回数の増加などが報告されています。
他にも、プルーンも排便回数や便形状などの改善報告があります。
Q2:「腸活」「便秘解消」と言えば○○、これを食べれば良い?
A2:特定の食材に偏ることはお勧めできません。
さて。○○に入る食品、色々あるのではないでしょうか。
- 納豆
- 甘酒
- 味噌
- キムチ
- オリーブオイル
- はちみつ
- バナナ
- コーヒー
- 白湯
どれも、一度は耳にしたことがありませんか?
発酵食品や食物繊維を含む食品として食生活に取り入れること自体は悪くありません。
「一般的に、便秘に良いと言われている食品」
を生活に取り入れたことで、確かに効果があったと感じた人もいらっしゃると思いますが、
食品の効果には個人差があり、全ての人に同じ効果があるとは限りません。
投薬時には「便秘改善に関する研究がある食品」と「一般的に良いと言われている食品」を区別し、エビデンスの程度を踏まえて情報提供できるといいですね。
Q3:毎日排便があるので、便秘ではないですよね?
A3:毎日排便があっても、便秘症の場合があります
例えば、
・便が硬い
・強くいきまないと出ない
・排便後も残っている感じがする
・肛門付近で詰まっている感じがする
排便回数だけでは判断できないことを患者さんにもぜひ伝えてください。
Q4:水をたくさん飲んでいるのに、それでも出ません
A4:水分だけで便秘が改善するとは限りません
もちろん、水分摂取が不足している場合には適切な水分摂取が重要ですが、便秘には様々な原因があります。
水分以外の要因にも着目するようにアドバイスしてみましょう。
まとめ
便秘症の食事療法というと
「食物繊維を摂る」
というイメージが強いかもしれません。
しかし、便秘は一つの原因だけで起こるものではありません。
薬剤師さんが患者さんに声をかける時には
①便の回数だけでなく、硬さ・排便困難・残便感はないか
②食物繊維が不足していないか
③水分摂取が極端に少なくないか
④食事量・食事回数が不足していないか
⑤便秘を起こす薬剤や生活習慣はないか
これら5つを踏まえて、
「その人の便秘の状態に合わせて考える」
という視点をもとに提案をすると、服薬指導時の満足度も上がるのではないでしょうか。
参考資料
- 日本消化管学会 『便通異常症診療ガイドライン2023ー慢性便秘症』南江堂、2023
- 厚生労働省 『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
- 厚生労働省 e-ヘルスネット『食物繊維の必要性と健康』












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